AIで作った広告に「AIで生成」の表示を義務づけ、米ペンシルベニア州で法律が成立 違反は最大3,000ドル

3行でわかる
- 米ペンシルベニア州のシャピロ知事は10月22日、AIで作った広告に「AIで生成・加工した」と表示させる州法に署名した
- 対象は、AIで作った画像・動画・音声が商品やサービスの中身・出どころ・本物かどうかを誤解させる広告で、文字だけの広告やパロディは外れる
- 表示は最初に見せる時点で、広告と同じ媒体に、目立つ形で出す必要があり、違反には州の司法長官などが訴えて最大3,000ドルの罰金を求められる
米ペンシルベニア州のジョシュ・シャピロ知事は現地時間2026年10月22日、AIで作ったり大きく加工したりした画像・動画・音声を広告に使い、消費者に商品を誤解させるおそれがある場合に「AIで生成・加工した」と表示するよう義務づける州法に署名しました(出典: Pennsylvania General Assemblyの公式ドキュメント)。名前は「人工知能による欺瞞的広告に関する法律(Artificial Intelligence Deceptive Advertising Act)」で、署名から60日後、12月下旬に施行されます。違反すると1件あたり最大3,000ドルの罰金が科される可能性があります。
何が決まったか
州議会の記録によると、この法律は州上院の法案806号として2025年6月に出され、上院は2026年6月に48対2、下院は10月7日に163対40で可決しました。知事の署名で、2026年の州法99号になりました。
条文が対象にするのは「合成コンテンツ」です。AIで作られたか、AIで大きく加工された画像・動画・音声・文章を指します。こうした素材を広告に使い、売っている商品やサービスの「中身・出どころ・本物かどうか」について消費者に誤った印象を与える場合、目立つ表示が必要になります。
A disclosure under this section must state that the advertisement contains content that was modified or generated using artificial intelligence.
この条項による表示は、広告にAIで加工または生成されたコンテンツが含まれていることを示すものでなければならない。
原文を読む(palegis.us)公式ドキュメントSenate Bill 806; Regular Session 2025-2026
表示の出し方も細かく決められています。
- いつ: AIの素材を最初に見せた時点で表示する
- どこに: 広告と同じ媒体に出す(動画なら画面に、ラジオなら音声で)
- どう見せるか: 大きさ・色・位置・表示時間・音量が、普通の人が気づいて読める・聞き取れる程度であること。消費者が使っている言語で出し、ほかの情報で打ち消したり隠したりしない
- 消せないこと: 技術的にできる範囲で、素材から外せない、または外すのが非常に難しい形にする
一方で、明らかに作り話とわかるもの、パロディ・風刺・論評・批評、文字だけの広告は対象から外れます。違反の疑いがあれば、州の司法長官か地区検事が差し止めや民事の訴えを起こせます。裁判所は1件あたり最大3,000ドルの罰金と、弁護士費用・訴訟費用の支払いを命じられます。
「わざと」でなくても対象になる書き方に
審議の途中で条文の重みが変わった点もあります。6月の修正で、禁止の対象を「故意に、無謀に、または意図的に」作った広告に限る文言が削られました。現在の条文は、誤解を招く使い方をした広告主に、わざとかどうかを問わず表示を求める書き方になっています。
法案を出したニック・ピシオッターノ州上院議員(民主党)は、下院を通った10月7日に自身のサイトで声明を出しました。
Consumers deserve to know if AI is being used to create a false impression about a product or service.
AIが商品やサービスについて誤った印象を作るために使われているなら、消費者はそれを知る権利がある。
原文を読む(pasenatornick.com)CBS Pittsburghによると、議員は取材に対し、高齢者の団体から「偽のAI広告でだまされる人が出ている」と訴えがあったことを法案の理由に挙げました。州外で作られた広告でも、ペンシルベニア州で表示されれば対象になると説明し、政治広告には適用されないとも話したと報じています。
反応と論点
反対の声もありました。MediaPostによると、IT企業の業界団体NetChoiceは10月4日付の書簡で、誤解を招く広告はすでに連邦法と州法で禁じられており、AIだけを対象にした規制を重ねても消費者保護は強まらないと主張しました。表示の大きさや時間の決まりが、短い動画や小さなバナー、音声広告では中身を圧迫しかねないとも指摘したと報じています。
州の外でも同じ流れがあります。MediaPostは、カリフォルニア州でも最近、AIで作った「合成の出演者」を使う広告に表示を求める法律が成立したと伝えています。広告そのものに限らず、音楽配信でもAIで作った曲を見分ける動きが進んでいます(SpotifyのAI楽曲対策)。
この法律で読み方が分かれそうなのは、「誤った印象」の線引きです。AIで背景を差し替えただけの商品写真は対象か、AIで作ったモデルが実在の利用者のように見える場合はどうか。条文に具体例はなく、実際の運用は司法長官などの判断と裁判に委ねられます。
日本のビジネスへの影響
使えるか・関係するか: 日本の会社でも、米国向けにネット広告やSNS広告を出していて、ペンシルベニア州の人にも表示されるなら関係します。議員の説明どおりなら、広告をどこで作ったかは問われません。施行は署名から60日後の12月下旬です。
誰にどう効くか: 越境ECや旅行・ゲームなどで米国に広告を出しているマーケターと広告代理店です。AIで作った商品イメージや、AIで加工した使用前・使用後の写真、実在しない「お客様の声」の映像は、まさに「中身や本物かどうか」を誤解させうる使い方に当たります。
今すぐやれること: 米国で配信中の広告素材のうち、AIで生成・加工したものを一覧にし、商品の見た目・効果・実在の人物と受け取られかねないものに印を付けておくことです。動画と静止画で「AIで生成・加工」と入れる表示の型を、今のうちに決めておくと施行後に慌てずに済みます。広告づくりに使うAIツールの選び方は広告・マーケティング向けAIのガイドにまとめています。
注意点: 罰金の上限は1件3,000ドルと大きくはありませんが、条文上は司法長官などが広告そのものの差し止めを求めることもできます。出稿中のキャンペーンが止まるほうが痛手になりえます。一方で、雰囲気づくりのための明らかな作り物や文字だけの広告まで一律に表示する必要はありません。どこまでを対象にするかは、施行後の運用を見ながら社内の基準を決めるのが現実的です。
一次情報
- 公式ドキュメントPennsylvania General AssemblySenate Bill 806; Regular Session 2025-2026(審議経過)
- 公式ドキュメントPennsylvania General AssemblySenate Bill No. 806, Printer's No. 1808(条文PDF)
- 公式発表ペンシルベニア州上院議員 Nick PisciottanoPisciottano's Landmark AI Bill Establishes One of Nation's First Advertising Disclosure Standards
参考にした報道(3件)
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