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DraftKingsのAI販促は負けやすい客を狙うとEFF、行動ターゲティング広告の禁止を主張

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. DraftKingsは2023年、販促を受けた客がどれだけ負けるかを予測するモデルを作り、特典の配分に使ったとNYTが報じた
  2. EFFは、DraftKingsが自社で集めたデータだけを使っている点を挙げ、第三者データの規制だけでは害を防げないと主張した
  3. DraftKingsは損失を基準に客を狙うことはないと否定。マサチューセッツ州の規制当局は州内の事業者のAI利用を調べ始めた

米国のデジタル権利団体EFF(電子フロンティア財団)は現地時間9月24日、スポーツ賭博大手DraftKingsがAIを使い、賭けで負けやすい利用者に販促を集中させているとして、行動履歴に基づくターゲティング広告の全面禁止を改めて求めました。根拠は、ニューヨーク・タイムズ(NYT)が9月19日に出した調査報道です。DraftKingsは、損失を基準にAIで客を狙うことはないと否定したと、業界メディアのYogonetやComplete iGamingが伝えています。

何が起きたか

NYTの記事は元従業員40人超への取材と、社内の資料・Slackのやり取り・賭けの記録に基づいていると、複数の業界メディアが報じています。編集部はNYT本文を直接確認できなかったため、以下は複数の報道で一致した内容です。

  • DraftKingsは2023年、賭けの記録で機械学習モデルを作った。客が販促(ボーナスや無料ベット)を受け取ったあとにどれだけ負けるかを予測し、社内で「弾力性(elasticity)」と呼ぶスコアを付けた
  • 入力には賭けの頻度、口座残高、これまでの負けなどが使われた。スコアが低い客には販促を減らし、高い客には送り続けた
  • モデルを数千人の客で試した元データアナリストのJayden Butts氏は、この計算では問題ギャンブラーが最も投資効率の高い相手になってしまうとNYTの取材に答えたと、Tech Timesなどが伝えている
  • 同じ記録から依存のリスクがある客を早めに見つけるモデルも2024年に開発が始まったが、実用化されなかった

DraftKings側は、販促はサービスを継続的に使っている客に向けたもので、損失の大きさで送り先を選んではいないと説明しています。責任あるギャンブル担当の幹部は、予測型のリスク判定は効果の根拠が十分でないと経営陣で判断したと述べたと報じられています。同社は販促の個別化にAIを使っていることは認めており、データ分析で販促を使ったスポーツ賭けの利益率が2025年に13%改善したとしています。

EFFが特に問題にしたのは、使われたデータの種類です。

EFF Deeplinks「DraftKings Is Using AI to Supercharge the Harms of Online Behavioral Advertising」公式発表

This highlights how policy solutions that only limit third-party data sharing and selling would not be enough to prevent these predatory advertisements. Rather, policymakers must ban online behavioral ads.

これは、第三者とのデータ共有や販売を制限するだけの政策では、こうした搾取的な広告を防ぐには不十分であることを示しています。政策立案者は、行動ターゲティング広告そのものを禁止すべきです。

原文を読む(eff.org)

EFFは、DraftKingsが外部からデータを買わず、自社で集めたデータ(ファーストパーティデータ)だけでモデルを動かしているように見えると指摘しました。AIは中身が見えないため、どのデータが効くか分からず、企業はさらに多くのデータを集めようとする、とも述べています。

背景

規制当局も動き始めました。マサチューセッツ州ゲーミング委員会のジョーダン・メイナード委員長は9月24日の会合で、DraftKingsの実態を聞き取り、州内の全事業者のAI利用を調べるよう職員に指示したと報じられています。同州の規則は、依存性を高めると知りながら、または合理的に予想されるのに、顧客データを使って自動化システムで販促を出すことを禁じています。委員会は現時点で違反を認定していません。

訴訟もあります。メリーランド州ボルティモア市は2025年4月、DraftKingsとFanDuelを市の消費者保護条例違反で訴えました。訴状は、両社が機械学習による予測モデルなどで価値の高い客を見極め、通知やボーナスで引き留めていると主張しています。依存の兆候がある客ほど特典が届くことが知られ、プロの賭け手がわざと依存者のような行動をまねている、という記述もあります。

反応と論点

Hacker Newsのスレッドは564ポイントを集めました。そこでは、カジノ大手Caesars Entertainmentが価値の高い客の離脱を予測し、特典で引き留める取り組みが、データサイエンスの講義で成功例として扱われていたという投稿が目を引きます。手法そのものは新しくなく、AIで規模と精度が上がったことが論点だという見方です。

DraftKings側は、入金限度額や利用時間の上限、自己排除の仕組みに加え、24を超える行動の指標を監視して注意喚起につなげていると説明しています。一方で、同じデータを売上の最大化には使い、客を守る予測には使わなかった点に批判が集まっています。

日本のビジネスへの影響

米国のスポーツ賭博の話ですが、構図は日本の広告運用にもそのまま当てはまります。購入額や生涯価値(LTV)を目標に入札を最適化すると、配信は「多く使う客」に自然と寄ります。公営競技、ソーシャルゲームの課金、消費者金融のように依存や過剰利用が起きやすい商材では、その客が「やめられない人」と重なるおそれがあります。

関係が深いのは、こうした商材を扱う広告運用者とアフィリエイト代理店です。今すぐできるのは、リターゲティングや販促の配信条件に除外ルールを入れることです。たとえば、利用制限や配信停止を申し出た客、短期間に入金や購入が急増した客を外します。

注意点は、「自社データだから安全」とは言えないことです。日本の個人情報保護法19条は、違法または不当な行為を助長・誘発するおそれがある方法での個人情報の利用を禁じています。個人情報保護委員会のガイドラインは、直ちに違法とはいえなくても社会通念上適正と認められない行為も「不当な行為」に含めています。広告AIの選び方は広告・マーケティング向けAIのおすすめにまとめています。

一次情報

参考にした報道(5件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。