AIで量産された曲5,000万曲をおすすめから外した、Spotifyが1年の対策を公表 人が作った曲を優先

3行でわかる
- Spotifyは10月20日、AIで量産された低品質な曲やスパムの曲5,000万曲以上を、この1年でおすすめから外したと発表した
- 規約違反を重ねた7,500万曲以上は配信そのものを削除し、おすすめの仕組みも人が作った曲を優先するように変えた
- 実在の人だと確認できたアーティストに付ける印は30万組を超え、聴かれる曲の99%以上をカバーしているという
音楽配信大手のSpotifyは現地時間10月20日、AIで量産された低品質な曲やスパムの曲を、この1年で5,000万曲以上おすすめから外したと公式ニュースサイトで発表しました。規約違反を重ねた悪質な7,500万曲以上は、配信そのものを削除しています。
何が発表されたか
今回の発表は、Spotifyが2025年9月に打ち出したAI対策の「1年目の報告」です。手間をかけずにAIで大量に作られた曲は、英語圏で「スロップ(slop、粗悪な量産品)」と呼ばれています。Spotifyはこうした曲を、聴き手のおすすめに入れない方針を明確にしました。
AI-generated slop and spam don’t belong in your recommendations
AIで作られた粗悪な曲やスパムは、あなたへのおすすめにふさわしくない。
原文を読む(newsroom.spotify.com)数字で見ると、対策は3段階です。
| 対策 | 規模 |
|---|---|
| おすすめから外した曲 | 過去1年で5,000万曲超 |
| 配信そのものを削除した曲 | 7,500万曲超(重大な違反・繰り返しの違反) |
| 実在の人と確認したアーティスト | 30万組超(うち7割超が独立系) |
スロップかどうかの判定は、1つの手がかりだけでは決めていません。外部の会社が作ったAI判定ツールを複数使い、その結果を、聴き手の反応、アップロードの傾向、タイトルや作者名などの曲の情報と突き合わせています。目を光らせている手口は、短期間の大量アップロード、同じ曲の使い回し、検索向けの名前の細工、極端に短い曲などです。
この判定を土台に、おすすめの仕組みは過去半年で何度も手直しされました。聴き手に飛ばされたり「聴きたくない」と言われたりした曲を洗い出すと、判定済みのスロップやスパムが目立ったことが見直しのきっかけです。手直しの後は、こうした曲がおすすめに混ざるという苦情がはっきり減ったといいます。編集者が選ぶプレイリストにも同じ基準を当てはめています。
「AIを使ったか」を見える化
削除やおすすめからの除外と並ぶもう1つの柱が、AIの使用を聴き手に見せる仕組みです。
- AIクレジット: 4月に始めた、曲づくりのどの役割や楽器にAIを使ったかを作り手が申告する仕組みです。毎日数万件の申告があり、スマホアプリの再生画面の「クレジット」で確かめられます
- AIペルソナ: 実在しないAIのキャラクターとして活動するアーティストに付ける表示で、すでに数千組に付いています。こうしたアーティストは、標準ではおすすめにも編集者のプレイリストにも入りません。Spotifyは、これを表示している大手の配信サービスは自社だけだとしています
- Verified by Spotify: 実在の人が作っていると確認できたアーティストに付ける印です。30万組を超え、聴き手が検索するアーティストの99%以上をカバーしています
なりすまし対策も進めています。アーティストが、自分の名義で出される曲を公開前に確認できる「Artist Profile Protection」は試験提供中で、数千組が参加しました。年内に全アーティストへ広げる予定です。
背景と論点
スパムの曲が問題になるのは、聴き手の体験だけでなく、作り手へのお金の流れにも関わるからです。Spotifyは2024年から、一定期間に1,000回以上再生された曲にだけ使用料を払う仕組みにしています。発表によると、AIで作られた可能性が高い曲は、この基準を下回る割合が10倍高いといいます。
一方で、Spotifyは自社の判定にも限界があると認めています。AIの曲を見分ける技術には限りがあり、作るAIが進歩するほどその差は広がると書いています。The Vergeも、AIの曲を減らすだけでなく人が作った曲を目立たせる方向に、おすすめの仕組みを変えたと報じています。
Spotify自身は、AIを使った音楽を締め出すわけではありません。同じ日には、音楽配信会社Believe(傘下にTuneCore)と組み、ファンがAIを使って好きな曲のカバーやリミックスを作れる有料の追加機能を準備していることも発表しました。参加はアーティストが選べて、再生されれば元の曲の作り手にも使用料が入る仕組みです。「量産された粗悪品は外すが、権利者が認めたAIの使い方は広げる」という線引きです。AIの曲に表示を付ける動きは、YouTube MusicやDeezerにも広がっています。
日本のビジネスへの影響
- 使えるか: 今回の対策は地域を限った発表ではなく、日本の利用者のおすすめにも同じ仕組みが働いているとみられます。AIクレジットはスマホアプリの再生画面の「クレジット」から確かめられます
- 誰に効くか: 店舗のBGMや動画広告にSpotifyの楽曲を参考にする音楽・広告の担当者、SunoのようなAI作曲ツールで曲を作って配信している個人や企業です。AIで作った曲を大量に配信して再生回数を稼ぐやり方は、おすすめに載らず、使用料の基準にも届きにくくなります
- 今すぐやれること: 自社やタレントの名義で配信しているなら、Spotifyのアーティスト向け管理画面で本人確認の状況を見ておくことです。年内に全アーティストへ広がるなりすまし対策の機能も、提供されたら有効にしておくと安心です。AIを使って曲を作っているなら、AIクレジットで正直に申告しておくのが安全です
- 注意点: 判定は機械によるもので、人が作った曲が誤ってスパム扱いされる可能性はゼロではありません。短い曲を大量にアップロードする、似たタイトルを付けるといった配信の仕方は、AIを使っていなくても疑われやすい点に気を付けたいところです
一次情報
- 公式発表Spotify For the RecordOne Year In: Putting Human Artistry First on Spotify
- 公式発表Spotify For the RecordBelieve and Spotify Partner to Unlock New Opportunities for Artists Through Licensed Fan Remixes and Covers
参考にした報道(1件)
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