AIで大きな成果を出せた企業は13%だけ、差をつけたのは「やめる基準」 Gartnerが2,002人に調査

3行でわかる
- 米調査会社Gartnerの調査で、AIから大きな価値を得たと答えた企業のIT責任者は13%にとどまった
- 成果を出している企業は、試験導入を本番に進めない基準や、効果の薄いAIを止める基準を持っている割合が高かった
- IT責任者の51%は、AIでIT全体の費用がかえって増えると見ており、人の役割を作り直す計画がある企業は4%だった
米調査会社Gartnerは現地時間10月19日、世界の企業のIT責任者(CIO)など2,002人への調査で、AIから「大きな」または「事業を変えるほどの」価値を得たと答えたのは13%だけだったと発表しました。成果を出している企業に共通していたのは、AIをどんどん増やすことではなく、見込みのない取り組みを「やめる基準」を先に決めていることでした。
何がわかったか
調査は「2027 CIO and Technology Executive Agenda」と呼ばれる毎年恒例のもので、2026年5月から7月に、企業のCIOと技術部門の幹部2,002人に聞きました。結果は米フロリダ州オーランドで開かれたGartnerの年次イベント「IT Symposium/Xpo」で発表されています。
Gartnerによると、この2年で企業のAIの使い道(ユースケース)は急に増えましたが、1つ1つが成功する確率は5件に1件のままです。講演した同社のバイスプレジデント、アリシア・マレリー氏は、数を増やすことと成果は別だと強調しました。
Volume is not value. AI is creating a reckoning for organizations that lack fundamental disciplines, such as defining use-case value ahead of time and establishing criteria for when to walk away.
量は価値ではない。AIは、使い道の価値を事前に定める、手を引く基準を決めておくといった基本の規律を欠いた組織に、清算を迫っている。
原文を読む(gartner.com)成果を出す企業の3つの違い
Gartnerは、事業の成果を上げつつ経営トップからもAIの価値を高く評価されているCIOを「先頭集団(vanguard)」と呼び、そうでない企業との違いを分析しています。数字を並べると次のとおりです。
| 取り組み | 持っている企業の割合 | 先頭集団になる見込み |
|---|---|---|
| 試験導入を本番に進めない判断の基準 | 31% | 2.3倍 |
| すでに本番で動いている効果の薄いAIを止める基準 | 17% | 2.6倍 |
| 人とAIが一緒に働く前提で職務を作り直す計画 | 4% | 2.4倍 |
いちばん差が大きいのは、動き出したAIを止める基準です。いったん社内で使われ始めた仕組みは止めにくいものですが、その基準を持っている企業は17%しかありません。マレリー氏は、IT部門だけで決められることではなく、事業部門の側にも価値の低い投資から手を引く覚悟が要ると話しています。
人は減るとは限らない
表の3つ目、職務を作り直す計画を持つ企業はわずか4%でした。AIの導入というとIT部門の人減らしを思い浮かべがちですが、調査の数字は違う方向を指しています。2027年にIT部門の人数を増やすと答えた回答者は40%で、増員先はセキュリティとデータ分析が目立ちます。Gartnerは、AIでシステムづくりが安く速くなるほど、作りたいものの量が増えると説明しています。
増えるのは人数だけではありません。マレリー氏は、デザイナーがテストを担い、テスト担当者が設計に加わるといった例を挙げ、職種の数は減っても1人が受け持つ範囲は広がると説明しました。
費用は読みにくくなる
費用の面では板挟みが見えます。AIでコストを下げるよう求める圧力が強まったと答えたCIOが58%いる一方、AIのせいでIT全体の総費用はむしろ増えると見るCIOも51%いました。
クラウドや月額制のソフトなら、契約時に年間の費用がほぼ見えます。AIは使った量や頼んだ作業の重さで請求が変わるため、従来と同じ予算の立て方と管理では追いつかない、というのがGartnerの指摘です。
Unlike traditional technology costs, which are largely predictable, AI costs are probabilistic and determined at run time.
ほぼ予測できる従来の技術の費用と違い、AIの費用は確率的で、実際に動かした時点で決まる。
原文を読む(gartner.com)反応と論点
この調査は海外のテック媒体でも取り上げられています。The Decoderは13%という数字を見出しに取り、成果が見えないままでも投資が続いている点を報じています。
The Decoderはまた、米Bloombergのヴラッド・クリアチコCEOが、AIの経済的な効果を測るにはまだ早いとしつつ、今が投資する時期だと考えているとも伝えています。13%という数字もCIO自身の自己申告で、価値の測り方は企業ごとに違います。「AIは役に立たない」と読むのは早計です。調査が示しているのは、成果を出す企業とそうでない企業を分けているのが、技術の選び方ではなく、始め方と止め方の管理だという点です。
AIの導入が人の働き方に与える影響は、Anthropic社内で若手の採用が減り会議が増えた事例でも数字で示されています。
日本のビジネスへの影響
- 使えるか: 調査は世界のCIOが対象で、日本企業だけの数字は発表に含まれていません。Gartnerは11月4日から6日に横浜で同じイベントを開く予定で、日本向けの分析が出る可能性があります
- 誰に効くか: AI導入の予算を握る経営者・情報システム部門の責任者と、各部署でAIの試験導入を進めている事業部門の担当者です。「まず試してみる」案件が社内に何件も並んでいる会社ほど関係があります
- 今すぐやれること: 社内で進んでいるAIの試験導入を一覧にし、それぞれに「いつまでに何の数字がどこまで動けば本番に進めるか」「どうなったら止めるか」を1行ずつ書き足すことです。業務に合うAIを選び直すときは、用途別の対話AIのガイドも参考になります
- 注意点: AIの費用は使った量で増えるため、本番に進めた後に請求が想定を超えることがあります。導入時の見積もりだけで判断せず、毎月の利用量と費用を部門ごとに見える形にしておく必要があります
一次情報
参考にした報道(1件)
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