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Claudeの開発元Anthropicが自社株の5%を社会のための基金に、AIで仕事が揺らぐ人への支援も視野

3行でわかる

  1. Claudeの開発元Anthropicが、自社株の5%を入れる社会のための基金を作ると発表した(株主の承認が条件)
  2. 会社の価値が基準から50%増えるごとに2%を足せる仕組みで、創業者らの寄付の約束と合わせ株式の約20%が社会向けになる
  3. 使い道の例はAIで不安定になる働き手への支援で、寄付だけでなく特定の人々へ直接配ることも検討する。運営の仕組みは数カ月以内に公表

対話AI「Claude」の開発元Anthropicは現地時間10月18日、自社株の5%を新しい基金「Anthropic Public Benefit Fund」に入れると発表しました。株主の承認が条件で、会社の価値が一定の基準から50%増えるごとに、取締役会の判断でさらに2%を足せる仕組みです。使い道の例として、AIで仕事が不安定になる働き手への支援を挙げています。

何が発表されたか

Anthropic Public Benefit Fundとは、Anthropicが100%持つ合同会社(LLC)の形をとる基金で、同社の株式を持ち、その価値を社会のために使うための器です。米国でよく使われる寄付専用の非営利団体(501(c)(3))の形をあえて選ばず、寄付・給付など配り方を柔軟に変えられるようにしたと説明しています。

発表の骨格は次のとおりです。

項目 内容
最初に入れる株式 発行済み株式の5%(株主の承認が条件)
追加の仕組み 会社の価値が基準から50%増えるごとに、取締役会の判断で2%を追加できる(基準の値は未公表)
使い道の例 従来の非営利団体への大口寄付、特定の人々への直接の分配
使わない用途 米国内外での政治献金・ロビー活動
今後の公表 運営体制と、株を足す条件となる評価額の節目を数カ月以内に公表。公益の取り組みの報告書も出す

同社は、IT企業が経営陣に「会社が育つほど増える報酬」を出すのはよくあることだとしたうえで、その増える分を経営陣ではなく社会に向けるのだと位置づけています。

Anthropic公式発表「Investing in the public benefit」公式発表

It is common practice for tech companies to offer escalating compensation awards to their executives. We are instead directing that equity to the public benefit.

IT企業が経営陣に段階的に増える報酬を与えるのはよくあることです。私たちはその株式を、代わりに公益へ振り向けます。

原文を読む(anthropic.com)

すでにある約束と合わせると、規模はさらに大きくなります。創業者たちは創業時に保有株の80%を寄付すると約束しており、社員が寄付を約束した株に会社が同じだけ上乗せする制度には社員の約半数が参加しています。今回の基金と合わせ、株式の約20%が公益に充てられる計算だと同社は説明しています(評価額の節目で足される分は別)。

なぜ「働き手」なのか

発表で真っ先に挙げられた用途が、AIが雇用に与える影響です。Anthropicはこの問題の調査と対策にすでに2億ドルを出すと約束していますが、AIの進歩の速さを考えると、もっと踏み込んだやり方が必要になるかもしれないとしています。

Anthropic公式発表「Investing in the public benefit」公式発表

AI may generate enormous economic value, but it could also cause instability for many workers.

AIは莫大な経済価値を生むかもしれませんが、多くの働き手を不安定にするおそれもあります。

原文を読む(anthropic.com)

同社は自社の働き方の変化も公表してきました。社内でClaudeを使い込んだ結果、若手技術者の採用の割合が大きく下がったという報告は「Claudeを社内で使い倒すAnthropic、若手技術者の採用は27%から9%に」で紹介しています。AIを売る側が、AIで仕事を失う側への手当てを自分の株で用意する、という構図です。

なお、AIの安全性の研究や医療分野の研究、非営利団体向けのClaudeの割引といった取り組みは、利益にもつながるため引き続き会社の中で行うとしています。基金はそれとは別に、会社の外へ価値を配る役割を担います。

背景:上場を前にした公益企業

Anthropicは、利益だけでなく定款に定めた公益も追うことが義務付けられた「パブリック・ベネフィット・コーポレーション(公益企業)」という米国の会社形態をとっています。ロイターは、同社が公益企業として史上最大級の上場を準備していると報じています。上場前の目論見書の中身は「上場目論見書を各社が報道、Anthropicは売上12倍も計算資源に5180億ドルの約束」でまとめました。

TechCrunchは、AIへの世間の反発が強まるなかでの発表だと指摘し、ダリオ・アモデイCEOがこの反発を「信頼の危機」と表現してきたことにも触れています。

反応と論点

発表には、まだ答えの出ていない点が多く残っています。TechCrunchとロイターはそろって、誰が配分先を決めるのか、基準となる評価額はいくらかが明らかになっていないと伝えています。基金の価値をドルで示した公式の数字もありません。

上場との関係も論点です。ロイターは今回の発表を、同社が準備している大型上場の文脈の中で報じています。5%分が基金に回れば、既存の株主から見れば持ち分の目減りにもなるため、株主の承認がどう進むかも焦点です。

設計そのものにも特徴があります。会社の価値が上がるほど基金の取り分が増える仕組みは、AIで大きな利益が出た場合ほど、雇用への影響などに回せる原資も厚くなることを意味します。ただし追加の2%は取締役会の判断によるもので、自動的に足されるわけではありません。

日本のビジネスへの影響

使えるか: 基金の対象地域や配分の仕組みはまだ公表されておらず、日本の働き手や団体が支援を受けられるかは現時点でわかりません。Claudeの料金や使い方は今回の発表では変わりません。

誰にどう効くか: 人事・経営企画の担当者にとっては、AIを導入する側の企業が「AIで仕事が変わる人」への手当てを経営課題として扱い始めたことを示す材料になります。AIによる業務の置き換えを進める会社ほど、配置転換や再教育の方針を社内外に説明する必要が増していきます。

今すぐやれること: 社内でAIの導入を進めているなら、どの業務がどれだけ置き換わりそうかと、その人たちの次の役割を一覧にしておくと、経営会議や労使の話し合いで使えます。仕事で使う対話AIの比較は「チャットAIのおすすめと料金比較」にまとめています。

注意点: 基金は株主の承認前で、運営体制も未公表です。株式の価値は上場の行方や株価次第で大きく変わります。基金の規模を金額で示した公式の数字はなく、報道などで見かける金額の試算は公式発表ではない点に気を付けてください。

一次情報

参考にした報道(3件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。