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Bainが「AIは2031年に年6兆ドルの売上が必要」と試算、生産性向上だけでは投資を賄えず

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. Bainは、AIインフラ投資が2031年に年1.5兆ドルに達し、それを支えるには年6兆ドル近いAI市場が必要と試算した
  2. 消費者向けのサブスクと広告、企業の生産性向上で見込めるのは1.2兆〜1.8兆ドルで、約4.2兆ドルが足りない
  3. 穴を埋める候補は検索・広告、自動運転などの自律化、フィジカルAI、新製品の4分野。前年の試算は年2兆ドルだった

米コンサルティング大手のBain & Companyは現地時間9月29日、7回目となる年次のテクノロジーレポートを公表し、AIインフラへの投資を続けるには2031年に年6兆ドル近いAIの売上が必要になると試算しました。既存の消費者向け・企業向けのAIで見込めるのは1.2兆〜1.8兆ドルで、約4.2兆ドルは今はない市場から生み出す必要があるとしています。The Nationalなどが報じ、Hacker Newsでも議論になりました。

何が発表されたか

Bainの試算は、投資額から必要な売上を逆算し、すでに見えている売上との差を新しい市場で埋めるという組み立てです。出発点は、新しいデータセンターや計算能力に、GPU・メモリ・ネットワーク機器の更新を加えたAIインフラへの支出で、2031年に年1.5兆ドルに達しうるとみています。そこから6兆ドルを導いた前提が、次の一文です。

Bain & Company「New Innovation Is Required to Fund AI’s $6 Trillion Buildout」公式発表

If we assume that capital expenditures amount to about 25% of industry revenue (an ambitious but reasonable percentage based on trends among cloud providers), sustaining this level of investment would require an AI market approaching $6 trillion annually.

設備投資が業界の売上の約25%を占めると仮定すると(クラウド事業者の傾向から見て、意欲的だが妥当な比率)、この水準の投資を続けるには年6兆ドル近いAI市場が必要になります。

原文を読む(bain.com)

2031年に必要な6兆ドルの中身を、Bainが示した数字で整理すると次のようになります。

区分 中身 2031年の規模
既存:消費者向け サブスクリプションと広告 2,000億〜4,000億ドル
既存:企業向け 開発・営業・マーケ・顧客対応・IT運用の生産性向上 1兆〜1.4兆ドル
新市場:検索・広告 チャットボットへの広告の組み込み、検索の置き換え 1,000億〜2,000億ドル以上
新市場:自律化 自動車・トラック・ドローンなどの自律運転、産業の自動化 4,000億ドル
新市場:フィジカルAI シミュレーション、デジタルツイン、ロボット 9,000億ドル
新市場:新製品 創薬、メンタルヘルス支援、新素材、科学研究の自動化など 金額は示さず

既存の2つを足しても1.2兆〜1.8兆ドルにとどまり、6兆ドルまでは約4.2兆ドル足りません。この4.2兆ドルを、表の新市場の4分野で埋める必要があるというのがBainの見立てです。金額が示された3分野を足しても1.4兆〜1.5兆ドルほどで、残りは、まだ存在しない製品に期待する形になっています。

なお、The Nationalは新製品開発が約4.2兆ドルを生むと報じていますが、Bainの原文では4.2兆ドルは4分野を合わせた不足額です。

背景

投資の勢いを示す数字も並んでいます。Microsoft、Google、Amazon、Meta、Oracleのハイパースケーラー(巨大なデータセンターを持つ大手)5社の設備投資は2026年に7,800億ドルに達しうるとし、3年前の5倍近い水準です。最先端のデータセンターは1ギガワット規模に近づいており、規模と費用はおよそ12〜16か月で倍になっています。

Bainは前年の2025年版で、データセンターに年5,000億ドルの投資が必要で、それには年2兆ドルの売上が要ると試算していました。対象の年は違いますが、必要な売上の見積もりは1年で3倍に膨らんだことになります。

Bain & Companyプレスリリース(デビッド・クロフォード氏の談話)公式発表

The debate today is fixated on employee productivity. The economics of AI infrastructure demand trillions in new revenue beyond productivity gains.

今の議論は従業員の生産性にばかり向いています。AIインフラの採算を合わせるには、生産性向上を超える何兆ドルもの新たな売上が必要です。

原文を読む(bain.com)

テクノロジー部門の会長を務めるクロフォード氏は、持続的に賄うには世界のGDP成長率を年1ポイントほど上乗せする必要があるとも述べています。プレスリリースによると、レポートはハードウェアと半導体の株価が2020〜2026年に年率24%で伸び、ソフトウェアの6%を大きく上回ったと分析しました。大手がHBM(AI向けの高速メモリ)の増産に集中し、一般的なメモリへの投資が細るため、スマートフォンやPCの値上がりにつながりうるとも指摘しています(Micronの決算の記事)。

反応と論点

Hacker Newsでは、6兆ドルは医療や銀行の業界の売上を大きく超えるとして実現性を疑う声が目立ちました。AIを使う側の企業がその支払いをどこから出すのかまで分析すべきだ、という指摘もあります。一方で、これは2031年に必要な市場規模の試算にすぎず、投資の正当化と結びつけた見出しは言い過ぎだという冷静な意見も出ています。Anthropicの上場目論見書でも計算資源への巨額の支払い約束があると報じられており(関連記事)、投資と売上の差は業界全体の論点です。

日本のビジネスへの影響

レポートは無料で、Bainの日本語サイトからも英語版とPDFを読めます。

関係が深いのは、広告主・マーケターと経営者です。Bainは、チャットボットへの広告の組み込みを含む検索・広告を、不足分を埋める柱の1つに挙げています。広告主にとっては、AIチャットが新しい出稿先として育つ流れが続く可能性が高いということです。経営者にとっては、AIの提供側に強い収益化の圧力がかかっていることを、今後の値付けを考える前提に入れておくべきです。

今すぐできるのは、自社のAI利用で費用の大きい処理を洗い出しておくことです。Bainのレポートにも、トークン費用のリスクの大半は少数のワークフローから生じるとして、そこを重点的に管理するよう勧める章があります。

注意点は、6兆ドルが「必要な売上」の試算で、市場の予測ではないことです。設備投資を売上の25%とする前提が変われば、数字も大きく動きます。AI APIの料金の比較はAI API(LLM)の料金比較と選び方にまとめています。

一次情報

参考にした報道(1件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。