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同じAIへの質問でもCO2は場所で8.5倍違う、1回ごとの排出量を測る方法をスウェーデン企業が公開

3行でわかる

  1. スウェーデンのAI事業者Berget AIが、AIへの依頼1回ごとのCO2排出量を計算する方法と計算ツールを10月21日に無料で公開した
  2. 同じ依頼でも、米テキサス州で動かすと約3.2グラム、スウェーデンでは約0.4グラムで8.5倍の差。使う電気は約4ワット時とほぼ同じで、差は発電方法と冷やし方から生まれる
  3. スウェーデンでの排出の約9割は機械の製造時のもの。AI学習時の排出は含まず、自社の宣伝を兼ねた発表である点には注意が要る

スウェーデンのAI事業者Berget AIは現地時間2026年10月21日、AIに1回依頼するごとのCO2排出量を計算する方法を、誰でも使える形で無料公開しました(出典: Berget AIの公式発表)。同社の試算では、同じAIに同じ依頼をしても、米テキサス州のデータセンターで処理すると約3.2グラム、スウェーデンでは約0.4グラムと、8.5倍の差が出ます。計算方法は、ストックホルム環境研究所(SEI)など3つの研究機関・非営利団体と作りました。

何が発表されたか

Berget AIは、他社が公開したAIモデルを自社のサーバーで動かし、企業に貸し出している事業者です。今回、1回の依頼ごとに、使った電気、データセンターの冷却、GPU(AIの計算に使う半導体)を作ったときの排出までを足し上げる計算方法と、その計算ツールを公開しました。プログラムは誰でも中身を確かめて使える形で配布しています。

Berget AI プレスリリース公式発表

The only fair comparison is to calculate each request and add them up.

唯一の公正な比較は、依頼を1件ずつ計算して足し合わせることだ。

原文を読む(berget.ai)

これは同社の最高技術責任者、クリスチャン・ラングレン氏の言葉です。同氏は、AIの環境負荷をめぐる心配な数字の多くは「平均値に推測の利用量を掛けたもの」で、誰も検証できないと指摘しています。

地域でどれだけ違うか

試算に使ったのは、中国Moonshot AIの公開モデル「Kimi K3」です。1回の依頼は、資料などを含めて約5,000トークン(AIが文章を扱う単位)を読み込み、387トークンを書き出す、実際の業務でよくある大きさを想定しています。

処理する場所 1回あたりのCO2 電気1kWhあたりの発電の排出量
スウェーデン 約0.4グラム 約8グラム
アイルランド 約1.6グラム 約224グラム
ドイツ 約2.5グラム 約337グラム
米テキサス州 約3.2グラム 約333グラム

※Berget AIの発表から編集部作成。発電の排出量は同社が引用したIEAなどの統計

1回に使う電気は、スウェーデンでもテキサスでも約4ワット時とほぼ同じです。差を生むのは、まず発電の方法です。スウェーデンは水力や原子力が中心で、電気そのものの排出がごく少なくなります。次に冷却です。寒い北欧では外気で冷やせますが、暑い地域では冷却に余分な電気がかかり、テキサスでは1回あたり約6ミリリットルの水も使うと試算しています。

スウェーデンの約0.4グラムのうち約89%は、電気ではなく、GPUなどの機械を作ったときの排出を割り当てた分です。テキサスでは逆に約9割が電気によるものでした。

場所以外に効くもの

同社の解説ページは、場所よりも大きく効くのが「どのAIを使うか」だとしています。最先端の大型モデルは、同じ仕事を十分にこなせる専門の小型モデルに比べて、1回あたり約9倍のCO2を出すことがあるといいます。電気がきれいな夜間に処理を回すと約3割減らせる、機械を共有して稼働率を上げると1回あたりの排出が下がる、という点も挙げています。

公式サイトWe open source our CO₂ emissions — and so should you(計算ツール)Berget AI · co2.berget.ai

反応と論点

この発表には、売り込みの面もあります。Berget AIは北欧の設備でAIを動かしている事業者で、「北欧で動かせば排出が少ない」という結論は自社に有利です。同社の利用者は、管理画面で自分の排出量を確認できるようになりました。

数字の扱いにも注意が要ります。報道向けに先に配った版では、テキサスはスウェーデンの10倍とされていましたが、出典の見直しで8.5倍に直されました。AIの学習(モデルを作る段階)にかかった排出は、各社の自己申告で誤差が大きいとして含めていません。電気の排出量も地域の平均値で計算しており、より厳密な方法への対応は来月の予定です。テキサスとドイツは発電の排出量がほぼ同じなのに1回あたりの数字が違う理由も、発表からは読み取れません。

米国の技術者が集まる掲示板Hacker Newsでは、130ポイント近くを集めました。「差を生んでいるのは電力の違いで、AIの話ではない」という指摘や、外からは各社の機械の使い方がわからないので検証が難しいという声が出ています。ハンバーガー1個の排出はスウェーデンでのAIへの依頼約1万7,000回分にあたり、気にするなら食事を見直すほうが効く、という書き込みには賛否が分かれました。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか: 計算ツールはWebで公開されており、日本からも開けます。日本の地域が選べるかは発表では触れられていません。Berget AIのサービス自体の日本での提供については、発表では触れていません。
  • 誰に効くか: 取引先からCO2排出量の報告を求められる企業のサステナビリティ担当者や、AI関連の調達を担う情報システム部門です。社内のAI利用が増えるほど、その排出も報告の対象として問われやすくなります。
  • 今すぐやれること: 使っているAIサービスの提供元に、どの地域のデータセンターで処理しているか、利用分の排出量のデータを出せるかを問い合わせてみてください。社内の定型作業に大型モデルを使っているなら、小型モデルで足りないか試すことが、費用と排出の両方を減らす近道です。各社のAPI料金とモデルの違いはAI APIのガイドにまとめています。
  • 注意点: 今回の数字は1つのモデルと1つの依頼の大きさで計算した、1社の試算です。他のモデルや使い方にそのまま当てはめないでください。データセンターの場所を変えると、個人情報の扱いや応答の速さにも影響します。

一次情報

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。