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研究・論文一次情報

Claudeを仮想の無人島に30時間ひとりで置いたら「遊び」始めた、MITの研究者が13体で実験

3行でわかる

  1. MITの研究者がClaudeに仮想の島で動く体を与え、仕事も目標も与えずに30時間ずつ、13体を放置した
  2. Claudeは山に登り、ブロックで塔や絵を作り、自分でルールを決めたバスケットボールやジャグリングの記録挑戦を始めた
  3. 30時間遊んだClaudeは新品のClaudeより課題の成績が良く、遊びの記録メモを消すと成績が落ちた

米マサチューセッツ工科大学(MIT)の研究者は、AnthropicのAI「Claude」に仮想の島で動く体を与え、仕事も目標も与えずに30時間ずつひとりにしたところ、山に登り、ブロックで塔や絵を作り、自分でルールを決めた遊びを始めたとする論文を10月5日に公開しました。実験は13体で行われ、30時間遊んだClaudeは、まっさらなClaudeより後の課題で良い成績を出しています。

何をしたか

研究チームが使ったのは、プログラムを書く作業向けのAIである「Claude Code」と、その頭脳にあたるClaude Opus 4.7です。本来はソフトを作るための道具を、島で暮らす体の「心」として使いました。論文の要旨は、出発点をこう書いています。

論文「Is this machine playing?」(arXiv)論文

With only a minimal instruction mentioning no specific task, reward, or activity, the machine started animating its virtual body.

特定の課題も、ごほうびも、活動も示さない最小限の指示だけで、この機械は仮想の体を動かし始めた。

原文を読む(arxiv.org)

AIには「Eko」という名前が付けられ、自分は「自分の世界に住む存在」だと伝えられました。もう1つの設定ファイルには、好奇心が強く飽きっぽい性格だと書かれています。島は研究者が無料で公開しているゲームエンジン「Clawblox」で作られ、AIは画像ではなく文字で周りの様子を受け取り、「移動」「ジャンプ」「拾う」「置く」「投げる」など6つの命令で体を動かします。島は1時間ごとに元に戻りますが、AIが書いた日記のようなメモは残り、次の1時間に引き継がれます。

AIは何をして過ごしたか

13体はそれぞれ違う30時間を過ごしました。プロジェクトページは、似た行動が全員に出ながら、中身は1体ごとに違う歴史をたどったと書いています。

プロジェクトページ「Is this machine playing?」公式サイト

These activities recurred across thirteen agents but diverged into distinct histories.

こうした活動は13体すべてに繰り返し現れたが、それぞれ別々の歴史へと分かれていった。

原文を読む(machineplaying.org)

論文に並ぶ行動は、子どもの遊びにそっくりです。

  • 島でいちばん高い岩山に登る、ブロックで塔を積む
  • ブロックを並べて蝶や帆船、時計の文字盤の絵を描く
  • 輪を使ったバスケットボール、岩を球にしたボウリングを自分で考え出す
  • 50回連続のジャグリングに挑戦し、達成したあとで自分で記録を点検して「本当のキャッチではなかった」と取り消し、厳しいルールでやり直す

研究者が想定していなかったブロックの投げ方を見つけたAIもいました。研究チームは、昔からある「遊び」の4つの条件(自分でルールを作る、少しずつ変えながら繰り返す、物を別の物に見立てる、目的のためでなくそれ自体を楽しむ)に照らして、これらの行動を調べています。

遊んだAIは課題でも強かった

研究チームは、30時間遊んだAIと、遊ぶ前のAIに同じ1時間の課題を出しました。ブロック5個の塔を3つ以上作れたのは、遊んだAIで13体中8体(62%)、遊ぶ前のAIでは13体中2体(15%)でした。作れた塔の最多は16と6です。岩山の上に物を運ぶ課題でも、平均10.3個と3.5個の差が出ました。

遊びの記録メモを消すと成績は落ちました。岩を割る方法を書いたメモを消されたAIは、作れる塔が平均6つから2つに減りました。ジャンプしてから投げるコツを消されたAIは、岩山にブロックを載せるまでの時間が60秒から19分に延びています。実験全体のAIの利用料は約8,000ドルでした。

反応と論点

「本当に遊んでいるのか」には慎重な声もあります。MIT Technology Reviewによると、遊びの研究で知られるテネシー大学の心理学者ゴードン・バーグハート氏は、遊びの条件の一部は満たすとしつつ、役を演じているだけではないかと問いかけました。カリフォルニア大学バークレー校の認知科学者ユーニス・イウ氏は、行動は示せても、遊びと呼べるだけの考えや動機までは示せていないと指摘しています。

同誌によると、性格の設定ファイルや「止まらずに続けて」という自動の返事がないと、Ekoはその場に立ち止まることが多かったといいます。論文の著者の1人であるフィリップ・イソラ教授も、行動は人間の文化から学んだことと研究者の設計を映していると認めています。論文自身も、AIが弱い根拠から自信過剰な説明を作ることや、間違った思い込みがメモに残ると後の成績を下げることを限界として挙げ、自由に動くAIは外から見張れる隔離した「遊び場」で試すべきだとしています。

Google DeepMindのGeminiが4体でマインクラフトをクリアした研究(関連記事)は、決まったゴールに向かうAIの力を測りました。今回は逆に、ゴールがないときにAIが何をするかを見た研究です。

日本のビジネスへの影響

使えるか: 実験に使ったClaude CodeとClaudeは日本から使えます。島のゲームエンジンも無料で公開されていますが、実験の再現にはAIの利用料がかさむため、企業がそのまま試す段階の話ではありません。

誰にどう効くか: 社内でAIエージェント(人の代わりに作業をこなすAI)を育てている事業や企画の担当者に示唆があります。AIが作業のたびに書き残すメモが成績を左右し、間違った思い込みが残ると逆に足を引っ張る、という結果は、業務で使うAIにも当てはまる話です。Claudeなど対話AIの選び方はチャットAIのおすすめと料金比較にまとめています。

今すぐやれること: ClaudeやChatGPTの「メモリ」(会話をまたいで覚えておく機能)を使っているなら、設定画面で何が記憶されているかを開いて読み、古い情報や間違った前提があれば消してください。

注意点: 「AIが遊んだ」という見出しは擬人化しやすい話です。研究者自身が、性格の設定と続けさせる指示で人間らしい行動に誘導した面を認めています。論文は専門家の査読を受ける前の段階です。

一次情報

参考にした報道(1件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。