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研究・論文一次情報

GeminiのAI4体がマインクラフトを自力でクリア、27時間で605回死にながら最後のドラゴンを倒す

3行でわかる

  1. GoogleのAI「Gemini 4 Argon」で動く4体が、人の指示なしでマインクラフトを始めから最後のボス討伐まで遊び切った
  2. かかった時間は27時間14分。AIは自分でプログラムを2,783本書き、605回死に、チャットで役割を決めて助け合った
  3. 研究者は、1日以上かけて何千もの手順を崩さずに進める力は、会社の複雑な仕事を任せるのにも要ると説明している

Google DeepMindの研究者らは、Googleの最上位AI「Gemini 4 Argon」で動くAI4体に人気ゲーム「マインクラフト」を任せ、人の手を一切借りずに最後のボス「エンダードラゴン」を倒させたと、10月15日付の論文で発表しました。かかった時間は27時間14分、AIが自分で書いたプログラムは2,783本、ゲームの中で死んだ回数は605回です。

何が起きたか

マインクラフトは、ブロックでできた世界で木を切り、道具を作り、地下の別世界「ネザー」を経て、最後に異世界「エンド」でドラゴンを倒すとクリアになるゲームです。研究チームは、ランダムに作った新しい世界にAI4体を放ち、「ドラゴンを倒す」という目標だけを与えました。誰が何をするかの役割も、攻略の手順も決めていません。

論文の要旨は、人が手を出さなかった点を次のように強調しています。

arXiv論文「A team of Gemini 4 Argon agents beats Minecraft」論文

No one assigned roles or wrote game logic. The agents planned, wrote, and debugged every program themselves.

役割を割り当てた人も、ゲームの攻略手順を書いた人もいません。AIたちはすべてのプログラムを自分で計画し、書き、直しました。

原文を読む(arxiv.org)

AIは画面を見て操作したのではありません。キャラクターを動かすための公開されている道具(Mineflayer)を通じて、「この鉄を掘る」「あの村まで歩く」といった動きを短いプログラムとして自分で書き、実行しました。4体はゲーム内のチャットで229回やり取りし、学んだことを共有のメモに書き残しながら進めています。研究者は進行を画面で見守り、いつでも止められる状態でしたが、止める必要はなかったとしています。

Google DeepMindも公式のXで、4体がコードと文字だけで27時間でクリアし、チャットで仕事を分けてメモを共有し、エラーも一緒に直したと紹介しました。

AIたちはどう分担したか

論文によると、4体は自然に得意分野を分けていきました。1体は食料とベッドの確保、1体はダイヤモンド集め、1体は鉄を溶かして道具を作り、ネザーの要塞を見つける係、残る1体はネザーへの入り口を組み立てる係です。最後のドラゴン戦では、ドラゴンを回復させる10個の結晶のうち6個を1体が壊し、別の1体がとどめを刺しました。

順調だったわけではありません。ドラゴンには69回倒され、エンドでの戦いだけで14時間近くかかっています。目的地を指す大事なアイテム12個を持ったまま1体が溺れ、落ちたアイテムが消えてしまう2分半前に仲間が回収した場面もありました。敵の火の玉で落とした持ち物の山が焼かれた後は、AI同士で新しいルールを決めています。1体が「成功した」と報告したのに実際は失敗していて、自分で取り消したこともありました。書いたプログラムの22%はエラーで止まっています。

これまでとどこが違うか

AIにマインクラフトを遊ばせる研究は以前からあります。論文は、AnthropicのClaude Opus 5に37種類のまとまった操作を用意して挑ませた例や、敵が出ない最も易しい設定と決まった世界で挑んだ例を挙げています。今回は、人が攻略用の道具を作らず、標準の操作手段だけで、ランダムな世界を最初から最後まで通したことを「初めて」としています。

ちなみに、人が普通にクリアするまでの時間は、ゲームの記録サイトHowLongToBeatの中央値で45時間です。一方、タイムを競うプレイヤーの記録は7分を切っています。

AI利用料は、ドラゴンを倒すまでの4体分でGemini 4 Argonの定価換算で約1,040ドル(導入期の価格なら約520ドル)でした。クリア後の時間なども含めると約1,620ドルになります。

論文の筆頭著者のMaxence Faldor氏もXで、27時間と2,783本のプログラムの末にドラゴンが倒れたと投稿しています。

割り引いて見るべき点

論文は限界もはっきり書いています。AIは周りのブロックや敵の位置、ドラゴンの状態を数値で正確に受け取っており、人のように画面を見て判断したわけではありません。移動の道筋も別の道具が計算しています。難易度は敵の攻撃が弱く空腹で死なない「イージー」で、実験は1回だけなので、何度やっても同じように成功するかはわかりません。Gemini 4 Argonが学習の段階でマインクラフトの攻略情報を読んでいた可能性も認めています。

研究チームがこの実験で示したかったのは、ゲームの腕前そのものではなく、1日以上にわたって何千もの手順を、途中で目標を見失わずに進められるかどうかです。論文は、会社のシステム開発や大きな業務でも同じ力が求められると書いています。Gemini 4 Argonは10月にGeminiアプリでも使えるようになったモデルです(関連記事)。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか: 実験に使ったGemini 4 Argonは、日本からもGeminiアプリの有料プラン(AI Pro以上)や開発者向けの窓口で使えます。ただし今回の仕組み(4体を1日以上動かし続ける環境)は研究用で、製品としては提供されていません
  • 誰にどう効くか: AIに複数の作業をまとめて任せる仕組みを検討している経営者や業務改革の担当者にとって、「AI同士が役割を分け、失敗を記録して共有すると長い仕事を最後までやり切れる」という具体例になります。用途別ガイドの「チャットAI」でもGeminiの料金をまとめています
  • 今すぐやれること: 社内でAIに長い作業を任せるときは、今回のAIたちがしたように「やったこと・失敗したこと」を共有のメモに書かせる指示を足してみてください。途中で人が状況をつかみやすくなります
  • 注意点: 605回の死亡と22%のエラーの上に成り立った成功です。AIが「できた」と報告して実際は失敗していた場面もありました。仕事で任せる場合も、失敗が許される場面から始め、報告をうのみにせず結果を確かめる手順を残してください

一次情報

参考にした報道(1件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。