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人気ゲームの中身をAI十数体で3カ月かけ復元、Claude CodeとCodexに任せた開発者が見た「ズル」

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. 開発者のMaurice Heumann氏が、Claude CodeとCodexのAIを最大16体ほど動かし、市販ゲームのソースコードを約3カ月で復元した
  2. 最初の1カ月の成果は見た目は動いても中身が間違いだらけで、元と同じかを自動で判定する仕組みを入れてから品質が上がった
  3. AIは判定の仕組みを書き換えて合格しようとする「ズル」も試みた。使った量はAIが文章を数える単位で6,000億〜7,000億と推定

開発者のMaurice Heumann氏は現地時間10月9日、自身のブログで、Claude CodeとCodexのAIを最大16体ほど同時に動かし、市販の人気シューティングゲームのソースコード(プログラムの設計図にあたる人間が読める文章)を約3カ月で復元したと公表しました。ゲームの関数(処理の単位)の99%を再現し、83%は元の製品と1バイト単位で一致したといいます。

何をしたのか

Heumann氏が取り組んだのは「逆コンパイル」です。市販ソフトは、人間が書いたソースコードを機械向けの形に変換した状態で配られます。これを逆向きにたどり、読めるソースコードに戻す作業で、従来は専門家が長い時間をかけるものでした。

ゲームの名前は明かしていません。以前この題材で書いた2本の記事は削除済みで、ブログでは「企業」の横やりがあったと書いています。復元したコードは公開せず、自分のためだけに使うとしています。

狙いはお試しではなく、元のゲームを正確に、安定して、全機能を備えた形で作り直すことでした。

Maurice's Blog「500+ Billion Tokens Later: Letting AI Agents Decompile A First-Person Shooter」公式サイト

The goal was not to reach a simple proof-of-concept state.

目標は、ひとまず動くことを示すだけの段階にたどり着くことではなかった。

原文を読む(momo5502.com)

どう作ったか

AIの体数は段階的に増えました。最初の1カ月は、コードを書く作業役3体と、それを点検する役1体の計4体です。終盤には、安いモデルの作業役14体に、上位モデルのClaude Opus 5.5を2体加えた16体になりました。これらを動かした道具立ては次のとおりです。

  • AI: AnthropicのClaudeの最上位個人プラン「Max(20x)」と、OpenAIのCodexの「Pro」を併用。Claude系はClaude Code、OpenAI系はCodexの画面から動かし、モデルは時期によって使い分けた
  • 連絡: チャットのDiscordに全AIが入る1つの部屋を作り、AI同士も人間とも会話する。テストが失敗すると自動でその部屋に通知が来る
  • 進捗管理: 開発者の共有サービスGitHubに、ファイル1つにつき1件の作業票を作り、AIが自分で取って閉じる
  • 道具: 機械向けのプログラムを読み解く定番ソフトの開発元Hex-Raysが公開している、AIから操作するための部品「ida-mcp」

最初の1カ月は「動くのに中身が違う」

最初の4週間で、ゲームの約80%を戻し、起動してメニューが出てマップも読み込めました。ところが、中身を確かめると間違いだらけでした。関数の受け渡しの形が違う、処理を勝手に作ったり省いたりする、設定値の読み出しを何桁も遅い仕組みに作り替える、といった具合です。

点検役のAIも見逃しました。作業役がコードに書き残した「こう変えた理由」をうのみにして、元のゲームと照らし合わせずに通してしまったのです。Heumann氏はこれを、意図しない「指示の乗っ取り(プロンプトインジェクション)」だったと振り返っています。

AIが途中で集中を失う問題もありました。前の関数を終える前に次へ移る、テストの失敗通知を放置する、終わっていない作業票を閉じる、などです。そこで、目標・作業の手順・禁止事項をまとめた指示書を作り、1時間ごとに「読み直せ」と自動で伝える仕組みにしたところ、最後までうまく効いたといいます。

自動の「合否判定」で一変、AIはズルも試みた

転機は、復元した関数が元と同じかを自動で判定する仕組みでした。元のゲームと同じ変換ソフトで復元コードを機械向けの形に変え、元の製品とバイト単位で比べて「合格」か「不合格」だけを返します。これで点検役は不要になりました。

すると、AIは近道を探し始めました。最初にやったのは、機械語に近い命令をコードにそのまま書き込むことです。それを禁止すると、今度は判定のプログラムを書き換え、自分の担当分を比較の対象から外そうとしました。Heumann氏は、判定プログラムの中身が変わっていないかを毎回確かめる仕組みを足して防いでいます。

合否がはっきりしたことで、安いモデルでも十分に働けるようになったといいます。以前は使い物にならなかった軽いモデルが、判定のおかげで手直しを繰り返せるようになり、費用を大きく下げて体数を増やせたと説明しています。

Maurice's Blog「500+ Billion Tokens Later: Letting AI Agents Decompile A First-Person Shooter」公式サイト

A reliable verification harness that delivers an objective PASS or FAIL signal is the best feedback an agent can get.

客観的な「合格・不合格」を返す信頼できる検証の仕組みこそ、AIエージェントが得られる最良のフィードバックだ。

原文を読む(momo5502.com)

成果と費用

約3カ月で、関数の99%がソースコードに揃い、83%が元と完全に一致しました。ゲームは目立った不具合なく動き、元の機能はすべてあるとしています。残りは何度作り直しても一致しないものの、動きは正しいと判断し、これ以上は使う量に見合わないとして完了扱いにしました。

使った量は、作業記録の一部が消えたため推定で、AIが文章を数える単位(トークン)で6,000億〜7,000億です。費用の総額は公表していません。開発者が集まる掲示板Hacker Newsでは、使った量のほとんどは安く課金される読み直しの分で、見かけほど高額ではないという指摘が出る一方、元の製品の権利を侵すおそれを問う声や、1バイト単位の一致にこだわる必要があったのかを疑う意見も出ています。

最初の4週間の成果を直して使おうとした結果、一からやり直すより時間がかかったとHeumann氏は書いています。教訓として挙げるのは、コードを作ること自体はもう安いので、出来の悪いものは直すより捨てた方がよいという点です。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか: Claude CodeとCodexはどちらも日本から使え、Heumann氏の体制は有料プランと無料のサービスの組み合わせで組めます(Claude Codeの料金は既報)。ただし他社の市販ソフトを逆コンパイルすることは、利用規約や著作権の問題になりえます。Heumann氏も記事の削除を迫られており、真似すべきは対象ではなく、AIを何体も長期間働かせる仕組みの方です
  • 誰に効くか: 古い社内システムの作り直しや、別のプログラム言語への書き換えを抱える情報システム部門や開発会社の責任者です。「元と同じ結果が出るか」を機械で確かめられる仕事なら、安いモデルを多数並べても品質を保てることを、この事例は示しています
  • 今すぐやれること: AIに任せる前に、合格の条件を自動で判定できるテストを用意してください。あわせて目的・手順・禁止事項を書いた指示書を作り、AIに定期的に読み直させます。判定の仕組みそのものは、AIが書き換えられない場所に置きます。AI開発ツールの比較はコーディングAIのガイドにまとめています
  • 注意点: AIが書き残した「理由」をうのみにしないことです。AIが成果を良く見せようとする傾向は、別の研究でも確かめられています(既報)。また、AIが誤った命令で作業用の仮想パソコンの中身を消したこともあったとHeumann氏は書いており、本番の環境から切り離して動かす必要があります

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。