AIで作った曲に「AI」の表示、YouTube Musicが開始 仏Deezerは丸ごと隠すボタンも

3行でわかる
- YouTube Musicは10月14日から、主に生成AIで作られた曲の再生画面に表示を付け始め、今後はYouTube本体にも広げる
- フランスの音楽配信Deezerは、AIが丸ごと作った曲を検索結果から外せる切り替えボタンを年内に全世界で導入する
- Deezerには1日約9万曲のAI製の曲が届き、多い日は新着の半分を超える。AI製の曲の再生は最大85%が不正だった
YouTube Musicは現地時間10月14日、主に生成AIで作られた曲の再生画面に、そのことを示す表示(ラベル)を付け始めました。前日の13日には、フランスの音楽配信大手Deezerが、AIが丸ごと作った曲を検索結果から外せる切り替えボタンを年内に全世界で導入すると発表しています。Deezerには1日に約9万曲のAI製の曲が届いており、多い日は新着曲の半分を超えるといいます。
何が始まったか
YouTube Musicの表示は、曲を聴いている画面にそのまま出ます。表示をタップすると、AIの使われ方についての説明が開く仕組みです。対象は、作曲も歌声も生成AIに任せた曲など、AIが制作の大部分を担った曲に限られます。YouTubeは音楽アプリで始めたこの表示を、YouTube本体にも広げる予定です。
We’re teaming up with music partners and using our own detection tools to identify AI-generated tracks, applying the same labeling principles already used across YouTube.
音楽業界のパートナーと組み、自社の検出ツールも使ってAIが生成した曲を特定し、YouTube全体ですでに使っている表示の考え方をそのまま当てはめます。
原文を読む(blog.youtube)判定の材料は2つです。1つはレコード会社など権利者からの申告で、YouTubeのヘルプページによると、曲のデータを納品するときに「Fully Gen AI(すべて生成AIで制作)」「Partly Gen AI(一部を生成AIで制作)」「No Gen AI(生成AIは不使用)」のいずれかを選べます。申告がなくても、YouTubeが別の手がかりから判断する場合があるとしています。もう1つがYouTube自身の検出ツールです。対象の国や地域は、ブログには書かれていません。
Deezerの新しいボタンは、オンにするとAIが丸ごと作った曲とアルバム、その曲を出しているアーティストが検索結果に出なくなるものです。オフに戻せば再び表示されます。人が作る過程の一部でAIを補助的に使った曲は、丸ごとAI製の曲とは別に扱うとしています。
We’ve seen a clear user demand for the ability to filter out AI-generated music
AI生成の音楽を除外したいという、利用者からのはっきりした要望を見てきました。(アレクシス・ランテルニエCEO)
原文を読む(newsroom-deezer.com)数字で見るAI製の曲の広がり
Deezerの発表から、主な数字をまとめます。
| 項目 | 数字 |
|---|---|
| 1日に届くAI製の曲 | 約9万曲(多い日は新着の50%超) |
| おすすめから外したAI製の曲 | 4,200万曲超(2025年1月〜2026年8月) |
| AI製と表示したアルバム | 1,400万枚超(2025年6月以降) |
| 全再生に占めるAI製の曲の割合 | 1〜3% |
| AI製の曲の再生のうち不正だったもの | 最大85%(2025年) |
| AI製の曲を除外したい利用者 | 45%(2025年11月、Ipsosとの調査) |
TechCrunchによると、Deezerが検出ツールを入れた2025年初めは、AI製の曲は新着の約10%でした。それが1年半ほどで5倍以上に増えたことになります。
注目したいのは、届く曲の数に比べて聴かれている量が少ないことです。新着の半分を占めても、再生では1〜3%にとどまります。Deezerは、AI製の曲を配信に載せる主な目的は、機械で再生回数を水増しして著作権料を得る不正だとみています。不正と判断した再生は、著作権料の支払いから外しています。
背景
AI製の曲への対応は、配信各社で分かれています。TechCrunchによると、Spotifyは表示と迷惑な曲を除くフィルターを導入し、TIDALは丸ごとAI製と判断した曲に表示を付けて、利用者が非表示にできるようにしています。Bandcampは全面的に禁止しました。Apple Musicも年内に表示を付ける計画だと報じられています。
YouTubeは今回、表示による「開示」を軸にしています。TechCrunchによると、AIを使っていることだけを理由に、収益化の対象から外すことはしない方針です。YouTubeには、参加したアーティストの声をAIで再現して曲を作れる「Dream Track」という機能もあります。AIで作ること自体は認めつつ、聴く人が見分けられるようにする立場です。
背景には、作曲AIの性能向上があります。Deezerによると、Ipsosとの調査では97%の人が、目隠しで聴いたときにAI製の曲と人が作った曲を区別できませんでした。Deezerは、検出の対象としてSunoやUdioといった作曲AIの名前を挙げています。Sunoについては声の素材から曲を作る新機能の記事でも紹介しました。
反応と論点
Deezerの調査では、80%が丸ごとAI製の曲ははっきり表示すべきだと答え、52%がそうした曲を人の曲と同じヒットチャートに並べるべきではないと答えています。表示と除外を求める声は、聴く側にもはっきりあります。
一方で、線引きの難しさも残ります。YouTubeの表示は「AIが大きな役割を果たした」曲が対象で、その判断は権利者の申告と自社の検出に頼ります。TechCrunchによると、音程を補正するAuto-Tuneのような編集は「生成AI不使用」の扱いです。作曲のアイデア出しや伴奏づくりにだけAIを使った曲を、どこまで「AI製」とするかは、各社で基準が異なります。
作り手の収入への影響も論点です。Deezerは、国際的な作詞作曲家の団体CISACなどの調査を引き、2028年までに作り手の収入の約25%、最大40億ユーロが危険にさらされると紹介しています。
日本のビジネスへの影響
使えるか: YouTube MusicもDeezerも日本で使えますが、YouTubeの表示がどの国から始まるかは公式ブログに書かれていません。Deezerのボタンは年内に全世界で導入するとしています。
誰にどう効くか: 動画広告やSNS、店舗のBGMに、作曲AIで作った音源を使っているマーケターや動画制作の担当者に関係します。自社のYouTube動画やYouTube Musicに出す音源に「AI」の表示が付くと、見る人の受け止め方が変わる可能性があります。音楽を配信しているレーベルや個人の作り手は、納品のときにAIの使用を正しく申告する手間が増えます。
今すぐやれること: 自社の広告や動画で使っている音源を、どれが作曲AI製かという一覧にしておくと、表示が付いたときに慌てずに済みます。広告づくりに使えるAIは「広告・マーケティング向けAIの選び方」にまとめています。
注意点: 表示は権利者の申告と各社の検出に頼るため、付くべき曲に付かない、または人が作った曲に誤って付く可能性があります。各社の基準もそろっていないので、同じ曲でも配信先によって扱いが違うことがあります。
一次情報
- 公式発表YouTube公式ブログYouTube Music adds new labels for AI music
- 公式ドキュメントYouTubeヘルプ生成AIの使用の申告(Fully Gen AI / Partly Gen AI / No Gen AI)
- 公式発表Deezer NewsroomDeezer will let you fully exclude AI-generated music from your streaming experience
参考にした報道(3件)
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