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GoogleのAI Overviewsを巡るCheggとPenskeの訴訟を米連邦地裁が棄却、独禁法違反を認めず

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. 米ワシントンD.C.連邦地裁は9月30日、CheggとPenske MediaがGoogleを訴えた独禁法訴訟2件を棄却した
  2. 判決は、検索流入を見込んで記事を提供するのは「期待」にすぎず、独禁法が問う「合意」には当たらないとした
  3. 裁判所は出版社の苦境に理解を示しつつ、法の不備は議会や規制当局が考える問題だと述べた

GoogleのAI検索機能「AI Overviews」が記事を無断で使い、検索からの流入を奪っていると訴えた2件の独占禁止法訴訟を、米ワシントンD.C.の連邦地裁が現地時間9月30日に棄却しました。原告は学習支援サービスのCheggと、Rolling StoneやVarietyを持つPenske Media Corporation(PMC)です。担当したアミット・メータ判事は、検索流入を見込んで記事を提供していただけでは、独禁法が問題にする「取引の合意」があったとは言えないと判断しました。

何が起きたか

判決文(Memorandum Opinion)は41ページあり、2件をまとめて判断しています。原告側の主張は、Googleが検索市場での独占的な地位を使い、出版社に無償で記事を出させ、それをAI Overviewsで再利用して出版社と競合している、というものでした。法的には、シャーマン法(米国の独禁法)違反として次の3つの構成を立てていました。

  • 互恵取引(reciprocal dealing): 「記事を差し出せば検索流入を返す」という交換条件を独占力で押し付けている
  • 抱き合わせ(tying): 検索とAI Overviewsを別の製品として抱き合わせている(PMCのみ)
  • 独占の企て・独占力の転用: 検索の独占をオンライン出版の市場へ広げようとしている

裁判所はどれも認めませんでした。中心になった互恵取引の主張には、条件の提示や受諾、期間や数量の交渉といった「合意」の中身が書かれていない、と指摘しています。

米ワシントンD.C.連邦地裁の判決文(Memorandum Opinion)公式ドキュメント

But an expectation is not an agreement. It is simply how a general search engine works.

しかし、期待は合意ではない。それは汎用検索エンジンの仕組みそのものにすぎない。

原文を読む(storage.courtlistener.com)

抱き合わせの主張についても、判決は原告自身の主張と矛盾すると述べました。利用者がAI Overviewsの答えで満足してリンクを押さなくなる、という主張は、検索とAI Overviewsが「質問に答える」という同じ用途を持つことを示している、という理屈です。DuckDuckGoなど他の検索エンジンも結果の上にAI要約を出していることも挙げ、検索とAI Overviewsは1つの製品だと判断しました。

カリフォルニア州法に基づく不当利得の請求は、連邦法の請求がすべて退けられたため、裁判所が判断そのものを見送りました。判決には上訴できる最終命令が付いています。

公式ドキュメントMemorandum Opinion(Chegg v. Google / Penske Media v. Google)米ワシントンD.C.連邦地裁 · storage.courtlistener.com

背景

メータ判事は、司法省がGoogleを訴えた検索独占の裁判を担当した判事です。2024年にGoogleの検索独占を違法と認定し、2025年には是正措置の判断も出しています。今回の原告はその認定を下敷きにしましたが、「検索で独占している」ことと、「その力で出版社に不当な取引を強いている」ことは別だ、と線を引かれた形です。

同じ判事は2026年3月にも、ニュースサイトの発行元などがGoogle検索とAI製品を訴えた別の事件(Helena World Chronicle v. Google)で、似た「合意」の主張を退けています。判決文は今回もこの先例を引いています。

原告側は、記事の抜粋(スニペット)やAI Overviewsへの利用を断ると検索結果での露出も落ちるため、実際には断れない、と主張していました。Press Gazetteによると、PMCは訴状で、AI Overviewsの開始後に検索での表示回数と流入が減り、検索経由のアフィリエイト収入は2024年末までにピークから3分の1以上減ったと主張していました。

反応と論点

判決は出版社の主張を退けた一方で、出版社の置かれた状況には同情を示しました。判決文は「裁判所は原告が主張する損害を軽く扱わない」と書き、Googleが記事を対価なしに取り込んで再利用することで記者や教育者、クリエイターに影響が出ていると認めています。そのうえで、独禁法は技術革新による経済的な混乱に対応する立法の代わりにはならず、法の届かない部分は議会や規制当局が考える問題だ、と述べました。

業界団体の反応も伝えられています。Press Gazetteによると、米国のデジタル出版社団体Digital Content Nextのジェイソン・キントCEOは、違法と認定された独占を持つGoogleが報道をAI製品に取り込んでいると批判しました。Google、Chegg、PMCが上訴するかどうかは、確認できた範囲では報じられていません。

論点は「独禁法で戦えないなら何で戦うか」に移ります。英国ではAI Overviewsから記事を外す手段の提供を求める規制当局の動きがあると、Press Gazetteは伝えています。米国では、著作権訴訟や立法、そしてGoogleとの個別の対価交渉が残る道です。AIデジマが9月30日に伝えたように、Googleが対価を払っている出版社は約100社にとどまると報じられています(GoogleのAI回答への対価は約100社のみと報道)。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか・関係あるか: 判決は米国の独禁法についての判断で、日本の法律や公正取引委員会の判断を直接縛るものではありません。ただ、日本でもAI Overviewsは提供されています。「検索に載せる代わりにAIでの利用を拒めない」という構図は日本のメディアや比較サイトにも共通です。
  • 誰にどう効くか: 影響が大きいのは、検索流入で広告やアフィリエイトの収入を得ているメディア運営者とSEO担当者です。少なくとも米国では、裁判でAI Overviewsを止めたり対価を得たりする道が当面狭まりました。AI要約の下でクリックが減る前提で、事業計画を組む必要があります。
  • 今すぐやれること: Search Consoleで、AI Overviewsが出やすい「答えが1文で済む」検索語の表示回数とクリック率を分けて見ます。流入の落ち込みが大きいページは、独自データや一次取材、比較表など、要約されても読みに来る理由がある内容に寄せます。調べものAIが出典をどう扱うかは、リサーチ向けAIのガイドでも比べています。
  • 注意点: スニペットを禁止する設定などでAIでの利用を断ると、通常の検索結果での見え方も悪くなる、と原告は訴えていました。その主張は判決で退けられたわけではなく、法的な救済につながらなかっただけです。設定を変えるときは、流入への影響を小さく試してから決めるのが安全です。

一次情報

参考にした報道(3件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。