2026年10月6日(火) 海外のAIニュースを、日本語で最速に。 最終更新

海外のAI一次情報を、毎日日本語で。

スマホで顔を撮るとAIがニキビの薬を処方、米ユタ州で全米初の試験運用

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. 米Nolla Healthは、AIがニキビの塗り薬を初回から処方する試験運用を、州の許可を得てユタ州で始めた
  2. アプリで顔を5方向から撮影すると10〜15分で治療計画と処方が出て、料金は月4.99ドルから
  3. 最初の100人は医師2人が全件を事前に確認し、医師との一致率95%などを満たすと段階的に任せる範囲を広げる

米国のヘルスケア企業Nolla Healthは現地時間10月5日、自社のアプリ「Nolla Derm」で、AIがニキビの塗り薬を初回から処方する試験運用をユタ州で始めたと発表しました。同社によると、すでに出ている処方の「更新」ではなく、初めての処方をAIに出させることを州の規制当局が認めたのは全米で初めてです。料金は月4.99ドルからです。

何が始まったか

Nolla Dermは、スマートフォンで顔を撮影してニキビの状態を判定し、治療計画を立てるアプリです。今回の試験運用では、ユタ州に住む18歳以上の人が対象で、それまでの処方がなくても使えます。

共同創業者でCEOのルイス・ウェヌス氏はXで、AIが初回の処方を出す規制上の承認を米国で(世界でもおそらく)初めて得たと投稿しました。

使い方は次のとおりです。

  1. アプリで本人確認をし、説明に同意して、短い問診に答える
  2. 顔を5方向から撮影する
  3. 約10〜15分で治療計画が出て、必要と判断されれば初回の処方が出る
  4. 薬は自宅への配送か薬局での受け取り。毎日の撮影で経過を記録し、28回の撮影(1〜2カ月ほど)ごとに計画を見直す

アプリからは追加料金なしで医師にメッセージを送れ、返事はAIではなく免許を持つ医師が書くとしています。

AIに任せる範囲は段階的に広げる

州が認めた範囲は、軽度から中等度のニキビに使う塗り薬に限られます。重いニキビや妊娠中の人などは、AIの処方ではなく医師の診察に回されます。

試験運用を監督する医師のザイド・ファドゥル氏は、同社の発表の中で次のように述べています。

Nolla Health公式ブログ「Nolla Health Launches the Nation's First AI-Powered Prescriptions, Starting in Utah」公式サイト

The AI isn't making freeform decisions.

AIが自由に判断しているわけではありません。

原文を読む(nollahealth.com)

同社によると、AIは医師が事前に承認した塗り薬の治療計画の中から選ぶだけで、処方の流れには自由に文章を入力する欄がなく、決められた選択肢の外には出られない作りです。医師の関わり方は3段階で、少しずつAIに任せる範囲を広げます。

段階 対象 医師の確認
第1段階(4週間以上) 最初の100人 医師2人がそれぞれ、患者に届く前に全件を確認・承認
第2段階(8週間以上) 500人まで AIが直接処方し、医師が少なくとも週1回、全件を事後に確認
第3段階 それ以降 毎月、処方の10%以上を抜き取りで確認。症状の悪化や副作用の例は全件確認

次の段階に進むには、医師との判断の一致率95%、重い副作用ゼロなどの条件を満たし、州から書面で承認を得る必要があります。同社は、実際の症例で臨床医がAIの治療方針に同意した割合が96%で、食い違いの多くは塗り薬の濃度のような小さな調整だったとしています。

背景:なぜユタ州で、なぜニキビなのか

ユタ州は、新しい技術を一定の条件付きで試せるように規制の一部を緩める「規制の砂場(サンドボックス)」を設けています。窓口は州の人工知能政策局です。2025年10月には、Doctronic社のAIが既存の処方を30〜90日分更新する試験運用を認めました。州のページによると、こちらは新しい処方は出さず、依存性のある薬も扱いません。今回のNollaは、その一歩先の「初回の処方」に踏み込んだ形です。

Nolla Healthは、ユタ州では皮膚科の予約まで平均61日待ちで、皮膚科医が1人もいない郡が11あり、受診に最大300ドルかかると説明しています。ニキビの治療は効果と危険がよく知られていて、最初に試す対象として向いているというのが同社の考えです。

反応と論点

州の人工知能政策局は、サンドボックスへの参加は州が製品を承認・保証したことを意味しないと説明していると、The Daily Callerは報じています。医療業界の専門誌Medical Economicsによると、同局のザック・ボイド局長は今回の取り組みを大きな前進と評価しました。

一方で、Daily Callerは、先行したDoctronicの処方更新の試験運用に医師から批判が出ていたことも伝えています。同紙が取材を申し込んだ州の医師会や米国皮膚科学会は、回答しなかったとしています。AIの判定の精度や、誤った処方が出たときの責任の所在は、今後の運用で問われることになります。数字の多くはNolla Health自身が公表したもので、第三者による検証結果はまだ出ていません。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか: 試験運用はユタ州の住民に限られ、日本では使えません。日本では医師法で、医師による診察なしに処方することは認められておらず、同じ形のサービスがすぐに出てくる見通しはありません。
  • 誰にどう効くか: オンライン診療や美容・スキンケア事業の企画担当者、医療機関の経営者に参考になります。AIに全部を任せるのではなく「対象を軽い症状に絞る」「選択肢を医師が事前に決めておく」「最初は全件を人が確認し、成績が出たら任せる範囲を広げる」という設計は、医療以外の審査・承認業務にAIを入れるときの手本にもなります。
  • 今すぐやれること: 自社でAIに判断を任せたい業務があれば、まず「人との一致率が何%を超えたら任せる範囲を広げるか」という基準と段階を、導入前に決めておくとよいでしょう。
  • 注意点: 公表された一致率96%などは会社の自己申告です。医療のように誤りの影響が大きい分野でAIを使う場合は、規制当局の枠組みと、誤ったときに止める仕組みを先に用意することが前提になります。

一次情報

参考にした報道(2件)

AIデジマは、公式発表・X投稿・論文などの一次情報を起点に、複数の情報源を照合して日本語でまとめています。情報の収集・翻訳・下書き・照合にはAIを使い、編集方針と最終責任は編集長が負います(AIの活用について)。誤りを見つけた場合は訂正のご連絡をお願いします。

この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。