実在の漫画家の署名入りでAIが「偽ニューヨーカー漫画」、ChatGPTで15人以上の名前を確認

3行でわかる
- ChatGPTに米誌ニューヨーカー風の漫画を頼むと、実在する同誌の漫画家の署名入りの絵が作られることがわかった
- 米Nieman Labの調べでは、勝手に署名を使われた漫画家は15人以上。本人作と誤解された偽物がSNSで拡散した例もある
- OpenAIは問題の報告に感謝するとの声明を出したが、記事の公開時点でも実在の署名が入る絵は出続けていた
ChatGPTに「ニューヨーカー風の漫画を描いて」と頼むと、実在する同誌の漫画家の署名が入った絵が作られることを、米国の報道業界メディアNieman Labが現地時間10月5日に報じました。署名を勝手に使われていた漫画家は15人以上にのぼり、本人の作品だと誤解された偽物がSNSで広く出回った例もあります。
何が起きたか
発端は、8月下旬に相次いで亡くなった歌手のドリー・パートンさんと俳優のティム・カリーさんを描いた1コマ漫画です。天国の受付で2人が腕を組んで立つ絵がSNSで拡散し、右下には漫画家ブレンダン・ローパー氏のペンネーム「BLOPER」が入っていました。しかしローパー氏はこの絵を描いても署名してもいません。パートンさんのファンがChatGPTに「ニューヨーカー風の漫画」を頼んで作り、Facebookに投稿したものでした。
Nieman Labによると、ローパー氏のもとには双子の兄弟や見知らぬ人から「これはあなたの作品か」という問い合わせが相次ぎました。ChatGPTが同氏の署名を再現したのはこれが初めてではなく、5月にも別の人から知らせがあり、夏にはChatGPTの利用者が集まる掲示板でも同様の絵を見つけていたといいます。
ローパー氏の本物の作品は、ニューヨーカー誌がXで紹介しています。右下の署名が、拡散した偽物に入っていたものと同じペンネームです。
A cartoon by Brendan Loper. #NewYorkerCartoons pic.twitter.com/6cu5dIG7KO
— The New Yorker (@NewYorker) 2026年3月19日
どのくらい広がっているか
Nieman Labの記者が掲示板の投稿と自身の試行を調べたところ、ChatGPTの絵に署名が使われていたニューヨーカー誌の漫画家は15人を超えました。現役のエミリー・フレイク氏、ジョー・デイター氏、パット・バーンズ氏のほか、すでに亡くなった大御所の名前も含まれます。
| 確認されたこと | 中身 |
|---|---|
| 署名を使われた漫画家 | 15人以上(現役・故人を含む) |
| 絵の特徴 | 白黒の1コマ、簡素な背景、皮肉の効いた一言という同誌の作風をまねる。オチが意味をなさないものもある |
| 署名の出方 | 毎回ではない。でたらめな名前のこともあるが、実在の漫画家の名前が繰り返し出る |
| 同誌のロゴ | 一部の絵には同誌のロゴまで再現されていた |
漫画家たちは、作風をまねられることと名前を使われることを分けて受け止めています。Nieman Labの取材に対し、フレイク氏は自分の作品の面影はあるが自分の絵には見えないと話し、自分が言っていない発言を自分のものにされたようだと例えました。デイター氏は、クレジットカードを不正利用されたときよりも侵害されたと感じると語っています。
OpenAIの対応と、学習データの疑問
OpenAIの広報担当者はNieman Labへの声明で、創造性の未来は人間のものだという考えを示し、モデルの不具合や意図しない動きを利用者が指摘してくれることに感謝すると述べました。記者が問題を伝えたあと、ChatGPTはニューヨーカー風の漫画を頼まれると「第三者のコンテンツとの類似に関するガードレールに違反する可能性がある」という警告を出すようになりました。ただし同誌は、記事の公開時点でも実在の漫画家の署名が入る絵が作られ続けていたと報じています。
ニューヨーカー誌を発行するコンデナストは、2024年にOpenAIと複数年のコンテンツ提供契約を結んでいます。Nieman Labによると、同誌の広報担当者は、漫画をAIの学習に使う許可はどのAI開発企業にも出していないと説明しました。漫画の著作権は漫画家本人に残る契約で、同誌の契約書にAI学習への提供を認める条項はないといいます。OpenAIは、署名をどう学習したのかという質問には答えませんでした。
反応と論点
漫画家にとっての痛手は、名前の問題だけではありません。Nieman Labは、米ボルティモア・サン紙が長年の風刺漫画家を解雇し、いまはAIで作った漫画を載せている例も挙げています。AIの絵は、すでに漫画家の仕事そのものを置き換え始めています。
では、署名を勝手に使われた漫画家は何を訴えられるのか。著作権で争う場合、論点は署名ではなく作風をまねたことに置かれやすく、署名がそれだけで決め手になるとは限りません。米コーネル大学ロースクールのジェームズ・グリメルマン教授はNieman Labの取材に、署名は本物であることの印だが、フェアユース(公正な利用として著作権侵害にならない範囲)の判断では誰の作品かという表示が占める比重は小さいとの見方を示しました。別の道としては、氏名を無断で商売に使われない権利(パブリシティ権)がありますが、偽の漫画が営利目的で使われたことを示す必要があります。Nieman Labは、偽の漫画が売買された証拠は見つからなかったとしています。
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日本のビジネスへの影響
- 使えるか: ChatGPTの画像生成は日本でもそのまま使えるため、同じことは日本の作家やイラストレーターの名前でも起こりえます。今回の警告表示がほかの作家名や画風にも広がったかは、OpenAIから発表されていません。
- 誰にどう効くか: 広告やSNS投稿の画像をAIで作るマーケターと制作担当者に直接関係します。「〇〇風」と頼んだ絵に実在の作家の署名やロゴが紛れ込んだまま公開すると、作家の名前を無断で使ったと受け取られ、炎上や権利侵害の主張につながりかねません。
- 今すぐやれること: AIで作った画像を外に出す前に、四隅の署名・サイン・ロゴ・透かしのような文字がないかを確認する手順を、制作のチェックリストに1行足しておくとよいでしょう。プロンプトに実在の作家名や媒体名を入れない社内ルールも有効です。
- 注意点: 作風をまねること自体は直ちに違法とは限りませんが、実在の人物の名前が入れば話は別です。画像生成AIを選ぶときは、作家名の指定への制限や商用利用の条件も比べておく必要があります。各サービスの条件は画像生成AIのおすすめにまとめています。ChatGPTの画像まわりでは、画像を作る待ち時間に広告を出す試験も始まっています(ChatGPTで画像を作る待ち時間に商品の写真広告)。
一次情報
- X投稿X @NewYorkerA cartoon by Brendan Loper(The New Yorker公式の投稿)
- コミュニティHacker NewsChatGPT is adding real cartoonists' signatures to fake New Yorker cartoons(議論)
参考にした報道(2件)
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