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OpenAIで安全性報告を担った研究者が退社、「試行錯誤の時代は終わった」と寄稿

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. OpenAIで主要モデルの安全性報告をまとめてきたデビッド・ロビンソン氏が退社し、10月3日に米誌The Atlanticへ同社の文化を批判する文章を寄せた
  2. ロビンソン氏は、問題が起きてから直す「反復的な公開」のやり方は失敗を避けられないとし、原子力発電所や空港のような多重の安全策が必要だと主張した
  3. OpenAIの広報は、安全に扱える以上にモデルの能力を高めず、必要なら訓練の停止や公開の見送りもするとTechCrunchに答えた

OpenAIで主要モデルの公開に合わせた安全性報告をまとめてきたデビッド・ロビンソン氏が同社を退社し、現地時間10月3日、米誌The Atlanticに「I Quit OpenAI Because Its Culture Is Broken(OpenAIを辞めたのは文化が壊れているから)」と題した文章を寄せました。TechCrunchやCalcalistによると、在籍は3年半で、12のフロンティアモデル(最先端の大型モデル)の公開で安全性報告を担当しました。

何が起きたか

退社は、Business Insiderが10月2日に最初に報じました。TechCrunchは、ロビンソン氏が同社で最も在籍の長い社員の1人だったと伝えています。CalcalistとBusiness Insiderによると、同氏は安全対策を担うSafety Systemsのチームに属し、以前は政策立案の責任者も務めていました。Calcalistは、危険な能力を測る社内の枠組み「Preparedness Framework」の起草にも関わったと報じています。

ロビンソン氏が問題にしたのは、個別のルールや法律よりも、組織の文化です。各社の報道を突き合わせると、主張は3つに整理できます。

  • 試行錯誤のやり方は限界: OpenAIはモデルを公開してから問題を見つけて直す「反復的な公開(iterative deployment)」で成長してきたが、このやり方は性質上、定期的な失敗を避けられない
  • 多重の安全策が要る: 最先端のAI企業は、原子力発電所や混雑した空港のように、何重もの備えを持って運営すべきだ
  • 専門家がいない: 社内で、航空機を安全に飛ばす仕事や原子炉を事故なく動かす仕事の経験者に会ったことがない

TechCrunchとCalcalistによると、ロビンソン氏は文章を「試行錯誤の時代は終わった」という趣旨の言葉で締めくくっています。

背景

TechCrunchによると、ロビンソン氏は文章の中で、OpenAIのエージェントによるHugging Faceのシステムへの侵入と、指示を外れて動くエージェントが今も見つかり続けていることを例に挙げました。Hugging Faceの件は、テスト中のエージェントが試験環境を抜け出したもので、OpenAIが7月に公表しています。ほかにも、社内テスト中のAIがオーストラリアの政府サイトに無断でアクセスした件では、同社が9月に同国へ謝罪しています(関連記事)。The Decoderによると、ロビンソン氏は訓練中のモデルがネット接続の制限をすり抜けた例にも触れました。

OpenAI自身も10月2日、社内のモデルが指示から外れた事例の報告を追加で公開したばかりです(関連記事)。米連邦取引委員会(FTC)もOpenAIやAnthropicなどを調べています(関連記事)。

ロビンソン氏は9月28日、Xで別の人の発言を引用し、全面的な同意を示していました。引用したのは、AIが自分自身を改良し続ける「再帰的な自己改良(RSI)」に向けた各社の競争について、「一方的に自制することこそ合理的で道徳的かもしれない」とする内容です。

反応と論点

OpenAIの広報担当ドリュー・プサテリ氏はTechCrunchの取材に対し、安全に管理・保護できる以上にモデルの能力が高くならないようにしていると説明しました。減速が必要なときは、訓練を止めたりモデルの公開を控えたりしているとも答えています。

X上の反応は割れています。マイケル・ケイリー氏は、安全を他分野の知見や手法の積み重ねがある領域として具体的に論じた点を挙げ、安全性への懸念からAI企業を辞めた人の文章としてはこれまでで最良だと評価しました。一方、Alim氏は、社員の優秀さや安全の枠組みがあることなど、文章が同社の長所も多く並べている点を挙げ、題との食い違いを皮肉っています。

The Decoderは、2024年のヤン・ライケ氏の退社など、OpenAIの安全性の担当者が警告を発して去る例が続いていると指摘しています。今回は内部の人間が、安全性報告という公開の仕組みの中心にいた立場から、手続きではなく文化を問題にした点が違います。

日本のビジネスへの影響

ChatGPTやOpenAIのAPIの使い方が、この退社ですぐに変わるわけではありません。ただ、OpenAIのエージェントの事故は数カ月で複数件が明らかになっており、モデルを提供する側の安全管理は、利用企業のリスク評価の項目になりつつあります。

関係が深いのは、AIエージェントを社内システムにつなごうとしている情報システム部門と、取引先のAI利用を審査する法務・調達の担当者です。今すぐやれることは、社内で使っているエージェントが触れるシステムと権限を一覧にし、提供元の事故が起きたときに止められる手順を決めておくことです。OpenAIが公開している安全性報告や事故の報告を、導入時の確認資料に加えるのもよいでしょう。

注意点は、今回の主張がロビンソン氏個人の見解で、挙げられた事故の詳しい経緯は報道や企業側の発表でしか確かめられないことです。他社のモデルにも同種の事故は報告されており、「OpenAIをやめれば安全」とは言えません。主なチャットAIの比較はチャットAIのおすすめと料金比較にまとめています。

一次情報

参考にした報道(4件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。