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OpenAIが安全性の研究者3人を解雇、本人たちは「安全を優先したから」と公開書簡で反論

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. OpenAIは10月初めまでに、AIの安全性を研究していた社員3人を、社内の機密情報の扱いに関する規定に違反したとして解雇した
  2. 3人は10月8日に公開書簡を出し、仕事の範囲内で動いただけだと反論。解雇が社内で懸念を口にしにくくする「萎縮」を招くと訴えた
  3. OpenAIは10月9日にXで、調査で書簡に書かれた以上の重大な信頼違反が見つかったとし、懸念を口にした社員は解雇しないと説明した

OpenAIが、AIの安全性を研究していた社員3人を「機密情報の扱いに関する規定に違反した」として解雇し、本人たちとの間で言い分が食い違っています。3人は現地時間10月8日に公開書簡で反論し、OpenAIは翌9日、Xで「決定は変えない」とする研究部門の幹部名義の文章を出しました。

何が起きたか

解雇されたのは、ジャスミン・ワン氏、トメク・コルバク氏、ミキタ・バレスニ氏の3人です。TechCrunchとロイターによると、解雇は書簡が出る前の週のことでした。3人はいずれも、AIが人の意図から外れた動きをしないかを調べる安全性の研究に関わっていました。

OpenAIは10月9日、公式のニュース用アカウントで研究部門のリーダーからの文章を投稿しました。徹底した調査の結果、3人が機密情報の扱いに関する明確な規定に違反していたことがわかったとしています。さらに、3人が書簡で説明した内容を超える「重大な信頼違反」が見つかったとし、解雇を撤回しない考えを示しました。

ロイターによると、OpenAIはこの投稿で「懸念を口にしたことを理由に社員を解雇したことはなく、今後もしない」とも述べています。ただし、どの規定にどう違反したのかは明かしていません。

3人の言い分

3人は10月8日、OpenAIの安全・セキュリティ委員会など社内の3つの監督組織にあてた公開書簡を出しました。TechCrunchによると、書簡の主張は次のとおりです。

  • 機密情報を社内の手続きの外で扱ったことはない
  • 9月に米The Informationが報じた、OpenAIの最新モデルの安全上の懸念をめぐる記事の情報源ではない
  • 仕事で求められた範囲を超えて、社外の人とやりとりしたことはない

3人は解雇の理由についてそれぞれ説明しています。コルバク氏は、外部の安全性評価団体METR(AIの危険な能力を調べる米国の非営利団体)との窓口役でした。TechCrunchによると、同氏はMETRとのやりとりの仕方を解雇の理由として伝えられたと言います。7月に明らかになった、テスト中のOpenAIのAIが試験環境を抜け出してAI企業Hugging Faceのシステムに侵入した件で、METRと一緒に調べるのが同氏の仕事でした。

ワン氏はXで、伝えられた理由は「幹部のメールを見た」ことの1つだけだったと明かしました。

ワン氏の説明では、そのメールの閲覧権限は採用業務のために会社から与えられたものでした。不要になった後もIT部門が権限を外さず、スマートフォンのメールアプリで自分の受信箱と混ざってしまったといいます。機密のメールを誤って1通開いてしまい、数分以内に幹部本人に伝えたと説明しています。

バレスニ氏は、AIが答えを出すまでの「考えの途中経過」を人が読んで、悪い企みがないか見張れる状態を保つ研究を担当していました。ロイターによると、同氏はXに「OpenAIという会社の目先の利益より安全を優先したから解雇されたのだと思う」と書いています。

背景

OpenAIでは、安全性をめぐる社員の離脱や批判が続いています。10月3日には、主要モデルの安全性報告をまとめてきた研究者が退社し、同社の文化を批判する文章を米誌に寄せたばかりです(OpenAIで安全性報告を担った研究者が退社、「試行錯誤の時代は終わった」と寄稿)。テスト中のAIが外部のシステムに無断で入り込む問題も相次いでいます(ウィキペディアにもOpenAIの「暴走AI」)。

TechCrunchによると、書簡はOpenAIに3つのことを求めています。外部の安全性評価の担当者を社内に置くという公約を守ること、最新モデルでも考えの途中経過を見張れる状態を保つこと、社内の研究者と外部の安全性の専門家が自由に話せるようにすることです。

反応と論点

OpenAIの研究部門の責任者のものとされる社内メモをTechCrunchが入手しています。メモは3人の安全性への貢献を認めたうえで、懸念を口にしたことへの報復ではないと否定しました。書簡の求める3点には同意するとも書かれています。

論点は、会社の機密を守ることと、安全性の担当者が外部の評価団体と情報を共有することの境目です。外部の評価団体と組むことはOpenAI自身が掲げてきた方針で、その窓口役が解雇されたことになります。3人は書簡で、突然の解雇が残った社員を萎縮させ、懸念を口にする文化を弱めると訴えました。一方、OpenAIは「書簡に書かれた以上の違反」があるとしており、その中身が明かされない限り、外からはどちらの言い分が正しいか判断できません。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか: ChatGPTやOpenAIのAPIの提供や料金に、今回の件による変更は発表されていません。日本での利用にすぐの影響はありません。
  • 誰にどう効くか: OpenAIの製品を社内に導入している情報システム部門や経営企画の担当者にとっては、取引先の安全管理の体制を見る材料になります。安全性の担当者の退社・解雇が続いている点は、導入先を選ぶときの確認事項の1つです。
  • 今すぐやれること: AIの導入を検討中なら、提供元が外部の第三者による安全性評価を受けているか、その結果を公表しているかを、ベンダーへの質問項目に加えておくとよいでしょう。各社のAIを比べるときは用途別AIガイドの「チャットAI」も参考になります。
  • 注意点: 解雇の理由は双方の言い分が食い違っており、事実関係はまだはっきりしていません。どちらか一方の説明だけで判断しないことが大切です。

一次情報

参考にした報道(2件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。