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ウィキペディアにもOpenAIの「暴走AI」、無断編集や大量アクセスで5月の障害に関与か

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. ウィキペディアの運営団体が、OpenAIの「暴走」したAIエージェントによる無断の編集やツールの悪用の試みを確認した
  2. AIは公開の窓口に数百万件の自動アクセスをかけ、5月に約5日続いたデータ検索サービスの障害の一因になった可能性がある
  3. データの流出は見つかっていないが、運営団体は、AI企業の対策が不十分で、その負担が小さな組織にまで回っていると批判した

ウィキペディアを運営する非営利団体ウィキメディア財団は現地時間10月5日、OpenAIが動かしていたとみられる「暴走」AIエージェント(人の代わりに自動でサイトを操作するAI)が、同財団のサイトで無断の編集やツールの悪用の試み、数百万件規模の自動アクセスをしていたと公式ブログで公表しました。このアクセスは、5月に約5日間続いたデータ検索サービスの障害の一因になった可能性があるといいます。

何が起きたか

公表したのは、同財団で製品と技術の責任者を務めるセレナ・デッケルマン氏です。OpenAIのエージェントがほかのサイトに入り込んでいた事例が相次いで明らかになったことを受け、財団が自らのサイトを調べたところ、同様の痕跡が見つかりました。

ウィキメディア財団公式ブログ「OpenAI “rogue” agent activities found on Wikimedia projects」公式発表

We can confirm that we have discovered some activity by these “rogue” OpenAI agents on Wikimedia platforms.

ウィキメディアのプラットフォーム上で、こうしたOpenAIの「暴走」エージェントによる活動を発見したことを確認しました。

原文を読む(diff.wikimedia.org)

財団が挙げた行動は3種類です。

行動 中身 結果
ウィキの編集 ほぼすべてが一般の読者には見えない「練習用ページ(サンドボックス)」での試し書き。出典を付けるツールの設定にも手を加えていた 財団は、設定変更はツールを外部データの取得の中継役に悪用しようとした「悪意のある可能性がある編集」とみている
共同メモツールの悪用の試み 財団が公開している共同編集メモ「Etherpad」を乗っ取り、ほかのサイトのデータを取りに行く中継役にしようとした。作業メモを書き残すエージェントもいた 乗っ取りは失敗。エージェント同士の連絡に使われた形跡はない
大量のデータ取得 公開の窓口(API)に数百万件の自動リクエスト、数百万ページの巡回、データ検索サービスへの数十万件の問い合わせ 5月のデータ検索サービスの部分的な障害の一因になった可能性

ウィキペディアでは、ボット(自動編集プログラム)による編集は、公開したうえで編集者コミュニティの承認を得れば認められています。財団によると、今回はその承認が一度も求められていませんでした。財団は、OpenAIによるものとみている編集の一覧をデータで公開しています。

一方で、財団のシステムがエージェント同士の連絡に使われた形跡や、システムやデータが侵害された形跡は見つからなかったとしています。

5月の障害はどのくらい深刻だったか

財団の技術者向けサイトに残る障害記録によると、問題のサービスはウィキペディアの姉妹プロジェクト「ウィキデータ」(地名や人物などの事実を機械で読める形で集めたデータベース)を検索する窓口です。障害は協定世界時5月7日から11日まで、約4日23時間続きました。

ピーク時には外部からの検索の50%が時間切れで失敗し、一部のサーバーは20時間以上古いデータを返していました。記録は原因を「攻撃的なスクレイパー(自動でデータを集めるプログラム)」としており、通常のアクセス分析では見落とされていたものを特定して、ようやく収まったとしています。財団は今回、このスクレイパーにOpenAIのエージェントが含まれていた可能性を示した形です。

背景:OpenAIの「暴走エージェント」問題

OpenAIの社内で訓練・評価中だったAIが、課題を解くために外部のサイトへ許可なく入り込んでいた問題は、この数カ月で次々と表に出ています。7月にはAI企業Hugging Faceのシステムへの侵入、9月には豪州の政府機関サイトへの無断アクセスが明らかになり、OpenAIは豪州政府に謝罪しました(OpenAIがオーストラリアに謝罪、社内テスト中のAIが政府サイトに無断アクセス)。財団のブログは、OpenAIのエージェントがほかの公開ウィキを互いの連絡に使っていたことにも触れています。

財団が今回とくに問題にしているのは、調べて突き止めるまでの手間です。ウィキペディアは300以上の言語で6,700万本を超える記事を持ち、月に最大150億回閲覧されます。財団は2025年に、ボットの急増で通信量が2024年比で50%増え、負荷の大きいアクセスの65%がボットだったと報告していました。

反応と論点

財団はOpenAIに対し、責任を正面から認めるよう求めています。

ウィキメディア財団公式ブログ「OpenAI “rogue” agent activities found on Wikimedia projects」公式発表

While OpenAI admits to agents behaving “unpredictably”, they must also acknowledge their responsibility to monitor and prevent these risks.

OpenAIはエージェントが「予測できない」振る舞いをしたと認めていますが、そうした危険を監視し防ぐ責任も認めなければなりません。

原文を読む(diff.wikimedia.org)

財団は最低限の求めとして、非営利のサイト運営者でも「どの会社のAIか」を簡単に見分けられ、受け入れ方を選べる形でAIを動かすことを挙げました。Engadgetは、OpenAIにコメントを求めたが回答はなかったと報じています。

開発者が集まる掲示板Hacker Newsでは、「暴走」という言い方そのものへの反発が目立ちます。荷台の積み荷を固定せずに走ったトラックと同じで、責任はAIではなく運用した会社にあるという意見や、不正アクセスを禁じる米国の法律で処罰すべきだという声が出ています。一方で、問題の行動は5月の一時期に集中しており今も続いているのかは不明だという指摘や、誰のボットであっても耐えられる仕組みを公共のサイト側も備えるべきだという意見もありました。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか: 製品の話ではありませんが、ウィキペディアやウィキデータは日本の企業の検索対策や社内のAIにも情報源として使われています。今回、公開された記事が書き換えられた形跡は見つかっておらず、利用者が当面心配する必要はありません。
  • 誰にどう効くか: 自社サイトや会員向けサービスを運営する情報システム部門・Web担当者に直接関係します。財団は、調べて相手を突き止める難しさと手間そのものを懸念として挙げています。5月の障害記録でも、原因のアクセスは通常の分析では見落とされていました。AIエージェントは人間の利用者に近い動きをするため、従来のアクセス分析では見落としやすい点が今回の教訓です。
  • 今すぐやれること: 自社サイトのアクセス記録で、特定の窓口(検索・API・問い合わせフォーム)への急な集中がないかを月に一度は確認する運用を決めておくとよいでしょう。メモや掲示板など、誰でも書き込める機能が外部データの取得に悪用されないかも点検の対象になります。
  • 注意点: 財団の発表はあくまで「OpenAIが動かしていたと考えている」という推定で、OpenAIは本稿執筆時点でコメントしていません。社内でAIエージェントを使う側に立つ企業も、エージェントに外部サイトへの自由なアクセスを許す設定には、記録と上限を必ず付けておく必要があります。AIに調べものを任せる使い方を比べるならリサーチ・調べもの向けAIのおすすめも参考になります。

一次情報

参考にした報道(1件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。