カリフォルニア州がAIだけに頼る解雇を禁止、人による裏付けと通知を義務に

3行でわかる
- カリフォルニア州のSB 947は、懲戒や解雇の判断をAIなどの自動判定システムだけに頼ることを禁じる
- AIの出力を主に使う場合は人が別の資料で裏付けを確認し、本人に書面で知らせる。施行は2027年7月1日
- SB 951はAIへの置き換えで大量解雇するとき、通知に自動化される仕事やAIの種類を書くよう求める
米カリフォルニア州のニューサム知事は現地時間9月30日、企業が懲戒や解雇の判断をAIだけに頼ることを禁じる法案SB 947に署名しました。AIの判断を主に使う場合は、人が別の資料で裏付けを確認し、本人に書面で知らせる必要があります。施行は2027年7月1日で、AIによる人員削減の通知や職場の監視を制限する法案もあわせて成立しました。
何が決まったか
知事室によると、知事がこの日に署名した法案は13本です。職場に関わる主な4本は次のとおりです。
| 法案 | 内容 |
|---|---|
| SB 947 | 懲戒・解雇の判断をAIなどの自動判定システムだけに頼ることを禁止 |
| SB 951 | AIへの置き換えによる大量解雇の通知に、自動化される仕事などの記載を義務化 |
| AB 1331 | 職場のトイレでの監視を禁止 |
| AB 1883 | AIで感情を読み取ったり脳の信号を集めたりする職場監視ツールを原則禁止 |
中心になるSB 947の条文は、次の一文です。
An employer shall not rely solely on an ADS when making a disciplinary or termination decision.
雇用主は、懲戒または解雇の判断にあたって、自動判定システムだけに頼ってはならない。
原文を読む(leginfo.legislature.ca.gov)ここでいう自動判定システム(ADS)とは、機械学習や統計モデル、AIなどでスコアや分類、推奨を出し、人の判断を補助または置き換えるものです。迷惑メールフィルターやウイルス対策ソフト、電卓などは含みません。
AIの出力を主な根拠にする場合、雇用主は人に裏付けを確認させなければなりません。使える資料として、上司の評価、人事記録、本人の成果物、同僚の評価、関係者への聞き取りが例示されています。裏付けが取れないとき、または確認した人が出力を不正確と判断したときは、その出力を使えません。
本人には、決定を伝える時点で書面の通知を渡します。AIを主に使ったこと、人が確認したこと、問い合わせ先、報復の禁止を書く決まりです。本人は、AIが使った自分のデータの説明を求めることもできます。AIで法律が保護する従業員の属性(人種や性別など)を推測することや、権利を主張した従業員を予測して不利に扱うことも禁じられます。違反には1件500ドルの罰金があり、州の労働長官(Labor Commissioner)や検察官が執行します。
SB 951は、従業員75人以上の事業所に義務づけられている大量解雇の60日前通知を改めます。解雇がAIなどへの置き換えによる場合は、人数と職種、勤務地、自動化される業務、使うAIの種類を書き、冒頭に「This notice is for a technology displacement」と記します。州は通知の集計を四半期ごとに公表します。
背景
知事の声明は、労働者を中心に置く姿勢を強調しています。
AI should expand opportunity – not come at the expense of workers and families. As this technology reshapes the workplace, California is putting people at the center, ensuring we all have a voice in the decisions shaping their future.
AIは機会を広げるべきで、働く人や家族を犠牲にしてはならない。この技術が職場を変えるなかで、カリフォルニア州は人を中心に置き、将来を左右する決定に誰もが声を上げられるようにする。
原文を読む(gov.ca.gov)連邦政府はAI大手との拘束力のない自主規制協定を結んだばかりです(関連記事)。知事室の報道担当はXで、業界の自主規制で足りるという主張を知事が強い言葉で批判する様子を投稿しました。
>>@CAGovernor Gavin Newsom on the Trump Administration’s AI meeting and the claim that the industry can self-regulate:
— Governor Newsom Press Office (@GovPressOffice) 2026年9月30日
“What I heard in Washington DC yesterday is bullshit and that should scare the hell out of everybody.” pic.twitter.com/vbf8cJLGTf
反応と論点
知事室の発表では、州の労働組合連合会のゴンザレス会長が、4本の法案はAIを人が監督する仕組みの第一歩だと評価しました。Engadgetは、人事専門サイトHR Diveの情報として、管理職の4人に1人が解雇する従業員の選定にAIを「頻繁に、または常に」使っていると報じています。
一方で、禁じているのは「AIだけ」に頼ることで、AIで人を減らすこと自体は止めていません。Engadgetも、規制の中心は解雇の進め方と監視であり、AIによる置き換えではないと指摘しています。労働協約で明示的に適用を外した職場や、連邦の航空・防衛関連の業務は対象外です。
日本のビジネスへの影響
カリフォルニア州で人を雇う日本企業の現地法人は、2027年7月1日までに対応が必要です。派遣会社など労働者を供給する事業者も雇用主に含まれます。日本国内の雇用には直接適用されません。
影響が大きいのは、米国拠点の人事担当者と、人事評価や勤怠管理のツールを提供する企業です。今すぐできるのは棚卸しです。生産性スコアや離職予測、評価ランキングを出すツールのうち、懲戒や解雇の判断に使っているものを洗い出してください。そのうえで、人が裏付けを確認した記録を残す手順と、書面通知のひな型を用意します。ツール提供元が、判断に使った従業員データを説明できるかも確認が必要です。
注意点として、罰金は1件500ドルでも、民事訴訟では懲罰的損害賠償や弁護士費用を求められる可能性があります。訴訟では、企業側がAIに主に頼っていないこと、または手続きを守ったことを示す必要があります。AIで人員を減らす計画があるなら、通知に業務内容とAIの種類が載り、州の集計として公表される点も考えておくべきです。
一次情報
- 公式発表カリフォルニア州知事室California’s nation-leading AI framework just got stronger, Governor Newsom signs more first-in-the-nation worker protections and more
- 公式ドキュメントCalifornia Legislative InformationSB-947 Employment: automated decision systems.
- 公式ドキュメントCalifornia Legislative InformationSB-951 Employment: technological displacement: notice.
- 公式ドキュメントCalifornia Legislative InformationAB-1331 Workplace surveillance.
- 公式ドキュメントCalifornia Legislative InformationAB-1883 Workplace surveillance tools.
- X投稿X @GovPressOfficeGovernor Newsom Press Office の投稿
参考にした報道(1件)
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