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AIが開発のほぼ全工程を手伝ったAI「Flint」を無料公開、ノートPCでネットなしに動く 4か月で完成

3行でわかる

  1. 米新興企業Recursiveは10月21日、プログラミング用のAI「Flint」を無料で公開した。手元のノートPCで、ネットにつながずに動く
  2. 開発では同社の自動研究システム「Eureka Machine」が、AIの設計から軽量化、高速化までほぼすべての工程に関わった
  3. 少人数のチームが4か月足らずで一から作った。AIがAIを作る「自己改善」の実地試験として注目と警戒の両方を集めている

米国の新興企業Recursiveは現地時間10月21日、プログラミング用のAI「Flint」を無料で公開しました。開発では同社の自動研究システム「Eureka Machine」が、AIの設計から軽量化、高速化までほぼすべての工程に関わり、少人数のチームが4か月足らずで一から作り上げたといいます。完成したFlintは手元のノートPCで、ネットにつながずに動きます。

何が発表されたか

Flintとは、プログラムの不具合の修正や機能の追加、テストの作成といった開発作業を任せるためのAIです。中身のデータ(重み)が公開されている「オープンウェイト」型で、AI共有サイトのHugging Faceから誰でもダウンロードできます。ライセンスは商用利用も認めるApache 2.0です。

手元のPCで動くため、社外のサーバーにコードを送らずに済み、使った量に応じたAPI料金もかかりません。同社によると、AppleのM4 Proを積んだMacBook Proで毎秒125語(トークン)以上、NVIDIAの小型AIマシン「RTX Spark」では毎秒150語以上を生成し、同程度の大きさのAIと比べて最大2倍速いとしています。

速さの理由は作りにあります。Flintは全体で約400億個の部品(パラメーター)を持ちますが、1語を出すたびに使うのはそのうち約25億個だけです。必要な専門家だけを呼び出す「混合エキスパート」と呼ばれる方式で、同社はソフトの不具合修正などを測る試験で、同じ規模(500億未満)の同方式のAIの中で最も高い成績だったとしています。

開発体制について、同社は公式ブログで次のように書いています。

Recursive公式ブログ「Introducing Flint」公式サイト

Our small team of people and agents built it from scratch in under four months.

私たちの少人数の人間とエージェント(自律的に動くAI)のチームが、4か月足らずでこれを一から作りました。

原文を読む(recursive.com)

公式ドキュメントRecursiveSI/flintHugging Face · huggingface.co

AIはどこを手伝ったのか

Eureka Machineは、人間の研究者が普段やっている「仮説を立てて試し、結果を見て次の手を決める」作業を、AIに繰り返させる仕組みです。Flintの場合、ノートPCで速く動かすという1つの目標に向けて、AIの工夫が何段階にも積み重なりました。

  • 形を決める: 速さは1語ごとに動かす部品の数で決まります。AIはいくつもの組み合わせを試し、「全体400億・使うのは25億」という形に絞り込みました
  • 小さく縮める: 完成したモデルを4ビットに圧縮する際、ふつうは縮めない出力の部分まで縮めました。性能の低下を補う訓練のやり方もAI自身が考え、訓練の手数はほぼ半分で済み、縮める前との成績差は1点未満でした
  • 機械に合わせる: AppleのチップとNVIDIAの機器のそれぞれで速く動くよう、専用のプログラムをAIが書きました

TechCrunchによると、こうした工夫によってモデルの大きさは71%小さくなったといいます。ただし、AIのおかげで研究者の作業時間がどれだけ減ったかは公表していません。

背景

Recursiveは、米Salesforceで研究部門のトップを務めたリチャード・ソーチャー氏が率いる会社です。TechCrunchは、同社が5月に6億5,000万ドルを調達し、評価額は46億5,000万ドルだったと報じています。社名のとおり「AIが自分より優れたAIを作り、それがさらに優れたAIを作る」という再帰的な自己改善を目標に掲げ、Flintはその最初の実地試験という位置づけです。

AIに研究そのものを任せる動きはほかの大手にも広がっています。TechCrunchは、OpenAIが9月に、社内のAIエージェントの作業量が8月半ばの時点で人間の研究者1人の勤務1日あたり3.1日分に達したと説明したことも紹介しています。

反応と論点

ソーチャー氏はXでFlintを紹介し、自社の自動研究システムで作った、手元で速く動くプログラミング用AIだと説明しています。

TechCrunchによると、米WIREDの記者がメモリ48GBのMacでFlintを試し、やることリストのアプリやWeb上の情報を集める道具を作らせたところ、頼んだ作業を毎回こなしたといいます。小型のプログラミング用AIはエラーを出したり遅かったりしがちだった、という比較も紹介されています。

一方で、Recursive自身も限界を認めています。ClaudeやCodexのような大型の有料サービスより細かい指示が必要で、大きな作業は小さく分けて頼むよう勧めています。また、AIがAIを改良し続ける「自己改善」は、人の手を離れて制御できなくなることを心配する研究者も多い考え方です。TechCrunchは、今回の仕組みは人が監督する研究の助手にとどまると書き、ソーチャー氏も、人が監督していつでも止められる形を目指すとWIREDに語ったと伝えられています。

日本のビジネスへの影響

使えるか: Flintは無料で、日本からもダウンロードできます。商用利用もできるライセンスです。ただし主な想定はプログラミングで、日本語の文章作成やビジネス文書の品質については公式の説明がありません。公式の速度はM4 Pro搭載のMacBook Proで測ったもので、WIREDの記者もメモリ48GBのMacで試しています。一般的な事務用ノートPCで同じ速さが出るとは限りません。

誰にどう効くか: 社内のシステム担当者や、ソースコードを社外のAIサービスに送れない受託開発の会社に向きます。経営者にとっては、AIの開発そのものをAIが担い、少人数・短期間で新しいモデルが出てくる流れが速まっていることを示す例です。

今すぐやれること: 社外にコードを出せない案件を抱える開発チームは、余っているMacで小さな修正作業を試し、クラウドのAIとの差を見てみる価値があります。手元で動くAIの選び方はローカルLLM・オープンウェイトモデルのおすすめで比較しています。同じく手元で動くAIとしては、MetaがMac 2台で動く大型モデルを公開しています。

注意点: 性能の数字はRecursive自身の測定によるもので、第三者の評価はこれからです。AIが書いたコードは必ず人が確認してから使い、社内の機器に入れる際は情報システム部門の許可を取る必要があります。

一次情報

参考にした報道(2件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。