Claude Mythosなどが見つけたシステムの弱点修正に4,000人、米バンク・オブ・アメリカCEOが明かす

3行でわかる
- 米バンク・オブ・アメリカのモイニハンCEOは10月14日、AIが見つけたソフトの弱点の修正に、社員約3,000人と外部の約1,000人をあてていると明かした
- 弱点を見つけたAIの1つは、Anthropicが一部の企業にだけ渡している攻撃・防御用の強力なモデル「Mythos」で、銀行自身と取引先のソフトの両方に見つかった
- 7〜9月期の費用はマネーロンダリング対策と合わせて数億ドル規模と報じられ、CEOは直し終われば費用は減るとの見方を示した
米国の大手銀行バンク・オブ・アメリカのブライアン・モイニハンCEOは現地時間10月14日、AIが見つけた自社システムの弱点(攻撃の入り口になりうる欠陥)を直すために、社員約3,000人に加えて外部の技術者約1,000人を投入していると明らかにしました。弱点を見つけたAIの1つとして、Anthropicが限られた企業にだけ提供しているモデル「Mythos」の名前を挙げています。AIが見つけた欠陥の後始末に何人を割いているかを、米国の大企業が数字で示した最初の例の1つです。
何が起きたか
The Next Webによると、モイニハン氏は7〜9月期の決算発表後に米CNBCのインタビューでこの数字を明かし、決算説明会でも同じ説明をしました。主な内容は次のとおりです。
- 体制: もともと社員約3,000人がこの作業にあたっていて、4〜6月期に外部の請負の技術者約1,000人を加えた。外部の人員はコンサルタント扱いのため、銀行の従業員数には含まれない
- 対象: 弱点は、銀行自身のソフトと、銀行が使う外部の取引先のソフトの両方に見つかった
- 費用: 7〜9月期には「数億ドル超(a couple hundred million dollars plus)」の費用がかかった。ただしこれは、別に進めているマネーロンダリング(資金洗浄)対策の立て直しと合算した金額で、AIの弱点対応だけの額は示されていない
- 見通し: 必要な人員がそろったので、弱点対応の費用は今後減っていくとの見方を示した
The Decoderも、CNBCの報道として同じ人数と費用を伝えています。どちらの媒体も、Mythosの名前を挙げたのはモイニハン氏自身だとしています。
Mythosとは何か
Claude Mythos Previewとは、Anthropicが2026年4月7日に発表した、ソフトの弱点を見つけたり、それを突く攻撃の手順を組み立てたりする能力が非常に高いAIモデルです。悪用を防ぐために一般には公開せず、「Project Glasswing」という枠組みで、守る側の企業や団体にだけ使わせています。
Anthropicの公式ページによると、参加企業にはAWS・Apple・Google・Microsoft・NVIDIAのほか、銀行ではJPMorganChaseが名を連ねています。ほかにも、重要なソフトを作ったり保守したりする40以上の組織が利用しています。Mythosは主要なOSとWebブラウザのすべてで、まだ誰にも知られていなかった重大な弱点を数千件見つけたとしています。
For cyber defenders to come out ahead, we need to act now.
サイバー攻撃を守る側が先手を取るには、今すぐ動く必要があります。
原文を読む(anthropic.com)Anthropicは10月には、電力や水道などのインフラを守る取り組みも始めています(既報)。
銀行業界で広がる「AIの後始末」
The Next Webは、ほかの大手銀行の動きもあわせて伝えています。JPMorgan Chaseのジェイミー・ダイモンCEOは5月、数百人がこの問題に専従していると話していました。米国の規制当局は、大手銀行がMythosの見つけた弱点を直す時間を確保できるよう、一部のサイバー検査を一時止めたとも報じています。欧州中央銀行(ECB)は、AIを使った攻撃への対策計画を10月末までに出すよう銀行に求めているとしています。
AIの性能が上がるほど、弱点は速く、大量に見つかります。見つけるのはAIでも、直す作業や、直したあとに業務システムが止まらないかの確認には、今も多くの人手が要ります。今回の数字は、その人手と費用の大きさを示しています。
論点
- 前向きな見方: 攻撃者より先に弱点を見つけて直せている、という点では守る側の成果です。モイニハン氏も、一度直せば次からの手直しは減るとしています
- 懸念: 同等の能力を持つAIは、守る側だけのものではなくなりつつあります。Anthropic自身、中国Zhipu AIの誰でも入手できるモデルがMythosに迫る攻撃能力を持つと報告しています(既報)
- 数字の読み方: 公表された費用はマネーロンダリング対策と合算で、AIの弱点対応だけの金額はわかりません。また、The Next Webは人数などを独自には確かめていないと断っています
日本のビジネスへの影響
- 使えるか: Mythosは招待制で、日本企業が申し込んで使える一般向けの窓口はありません。ただし、弱点を見つけるAIは他社からも出ており、守る側も攻める側も使える状況は日本でも同じです
- 誰に効くか: 金融機関や大企業の情報システム部門・リスク管理の責任者、そして経営者です。AIが弱点を大量に見つける時代には、「見つける」より「直す」ほうが人手と予算の制約になります。バンク・オブ・アメリカは、社員3,000人でも足りずに外部から1,000人を足しました
- 今すぐやれること: 自社と取引先が使っているソフトの一覧(どの会社のどの製品か)が最新かを確かめ、弱点が大量に見つかったときに誰が優先順位を決め、どこまで外部に頼むかを決めておくことです。取引先のソフトの弱点も対象になるため、契約で修正の責任と期限を決めているかも見直す価値があります
- 注意点: 急いで直すと、業務システムの停止や不具合につながることがあります。修正の速さだけでなく、試験の手順も含めて計画を立ててください。AIでプログラムを点検・作成する道具の比較は「AIコーディングツールの選び方」にまとめています
一次情報
- 公式発表AnthropicProject Glasswing
参考にした報道(2件)
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