2026年10月10日(土) 海外のAIニュースを、日本語で最速に。 最終更新

海外のAI一次情報を、毎日日本語で。

活用事例一次情報

古文書400年分をClaude Codeで作った仕組みに読ませたら、記録にない隕石や火山噴火が見つかった

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. 米国の技術者が、オランダ東インド会社の435万ページの記録や古い新聞をAIに調べさせる仕組みをClaude Codeで作った
  2. どの目録にもない1812年のインドの隕石落下、3件の火山噴火、王への贈り物だったサイ3頭の記録が見つかった
  3. 大量の文章のふるい分けは安いAIに任せ、象の記述5万9,000件の判定は約3ドル。発見はまだ専門家の確認待ち

米国のソフトウェア技術者ジェシー・ウェイツ氏が、17〜18世紀のオランダ東インド会社の記録435万ページなどをAIに調べさせ、既存の目録に載っていない1812年の隕石落下や3件の火山噴火の記述を見つけたと、現地時間10月8日に自身のブログで公開しました。調べる仕組みはAnthropicのClaude Codeを使って組み立て、大量の文章のふるい分けには1回数セントの安いAIを使っています。発見はあくまで「候補」で、本人は専門家に確認を依頼している段階です。

何を見つけたか

ウェイツ氏が調べたのは、オランダ東インド会社(VOC。17〜18世紀にアジア貿易を担った会社)の記録を文字に起こしたデータ「GLOBALISE」、オランダ国立図書館の新聞アーカイブ「Delpher」、2世紀分の米国の新聞、いくつかの航海日誌です。本人が挙げた主な発見は次のとおりです。

  • 隕石:1812年8月6日、現在のインド・マハラシュトラ州パンダルプル近くで、雷雲から重く鉄分の多い石が落ちたという英国人将校の手紙。バタビア(現ジャカルタ)の新聞に転載されていた。本人が調べた目録には載っておらず、事実なら同州で記録に残る最古の隕石落下を26年さかのぼるといいます
  • 火山噴火:米スミソニアン博物館の火山データベースにない、インドネシアの3件の噴火(1712年・1722年・1780年)
  • サイ:スリランカのキャンディ王への贈り物として運ばれたジャワサイ3頭の記録。1頭は1738年に馬小屋で、2頭は1740年に船の上で死んでいた

一方で、1808〜09年に起きたとされる正体不明の大噴火は、今回の方法でも見つかりませんでした。古い新聞に出てくる「空飛ぶ騎手」や「湖の大蛇」のような奇妙な記事も拾っていますが、本人は「未確認」とはっきり書いています。

どう作ったか

きっかけは、歴史家のベンジャミン・ブリーン氏が10月1日に、同じVOCの記録からAIでドードーの新しい目撃証言を見つけたと公開したことでした。ウェイツ氏はこれを他の歴史の謎にも広げようと考えました。仕組みは4段階です。

  1. 問いを決める:調査用のAIアシスタントに13の候補の問いを挙げさせ、順位を付けさせた
  2. 意味で探せるようにする:自宅のGPU(画像処理用の計算装置)で一晩、約12時間かけて570万の文章を「意味」で検索できる形に変換した。昔のオランダ語は綴りがばらばらなので、言葉の一致では探せないためです
  3. 安いAIでふるい分ける:TypeSafe AIの「Jev」(文章を書かずに「はい・いいえ」の確率だけを返す小型のAI)に、「はい・いいえ」で答えられる狭い問いを文章ごとに大量に投げた。費用は100万語あたり数セントで、象に触れた5万9,000件の判定は約3ドルだったといいます
  4. 残ったものを読む:絞り込んだ文章はClaude Haikuに読ませて翻訳し、日付と場所を抜き出した。最後はClaude Codeで原本の画像と照らし合わせた

工夫は、すでに知られている出来事(ドードー、1783年のラキ火山、1815年のタンボラ火山)を先に探させ、仕組みが本当に見つけられるかを確かめてから未知の出来事を探したことです。本人はこれを「自分の腕時計を庭に埋めて金属探知機を試すようなもの」と例えています。

調査の手順は「Antiquity」という名前の道具としてGitHubで公開しました。AIのコーディング支援と組み合わせて使う前提の、調査用の作業フォルダーを作るツールです。

公式ドキュメントjessewaites/antiquityGitHub · github.com

反応と論点

ウェイツ氏はブログの締めくくりで、発見したのはAIではなく「問い」だったと振り返っています。

Jesse Waites「I pointed AI at 400 years of archives」公式サイト

An archive doesn’t give anything up on its own; it only answers the questions someone thinks to ask.

記録は自分からは何も差し出さない。誰かが思いついた問いに答えるだけだ。

原文を読む(jessewaites.com)

Hacker Newsでは147ポイントを集め、「AIの使い方としてこれまで見た中で最良の部類」と評価する声がありました。一方で、17〜18世紀のオランダ語やドイツ語の手紙をAIが正しく訳せているのか、古い印刷物の文字起こしの誤りは大丈夫か、と信頼性を問う声も出ています。AIが答えを探してくれる分、調べた本人が歴史をどれだけ学べたのかを疑問視する意見もありました。

本人も、発見はすべて専門家の確認待ちの「候補」だと書いており、隕石の専門家や火山学者に連絡して返事を待っています。AIは最後まで自分が指示して動かした、とも強調しています。

日本のビジネスへの影響

  • 使えるか:使ったClaude Code、Claude Haiku、Jevはいずれも日本から有料で使えます。Antiquityは無料で公開されていますが、英語の道具で、プログラムを動かせる人が組み立てる前提です
  • 誰にどう効くか:社史や議事録、古い契約書、過去の顧客対応記録など「量が多すぎて誰も読み返していない文書」を抱える企業の、広報・法務・調査部門に効く考え方です。全部を高いAIに読ませず、安いAIで「関係ありそうか」だけを先に判定し、残りを詳しく読ませると費用が桁違いに下がります
  • 今すぐやれること:答えがわかっている過去の事例を1つ選び、それを社内文書の山からAIが見つけられるかを先に試すことです。見つけられれば、本当に知りたい問いに進めます。AIで資料を調べる道具の選び方はリサーチ用AIの比較ガイドにまとめています
  • 注意点:AIが訳した文や抜き出した日付は、必ず原本と照らし合わせて人が確かめる必要があります。ウェイツ氏も専門家の確認前の発見を「候補」と書き分けています。社外秘の文書を外部のAIに送る場合は、契約上のデータの扱いも確認してください

AIに作業チームを組ませて天文学の「後回しの仕事」を片付けた例は、天文学者がClaudeで夜空の紫外線地図を完成させた記事でも紹介しています。

一次情報

AIデジマは、公式発表・X投稿・論文などの一次情報を起点に、複数の情報源を照合して日本語でまとめています。情報の収集・翻訳・下書き・照合にはAIを使い、編集方針と最終責任は編集長が負います(AIの活用について)。誤りを見つけた場合は訂正のご連絡をお願いします。

この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。