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中国が高性能AIの「中身」の持ち出しを規制へ、無料公開した分やネット越しの利用は対象外とする案

3行でわかる

  1. 中国政府が10月16日、輸出を禁止・制限する技術の一覧に、大規模なAIモデルやAIエージェントなどAI関連の23項目を加える案を公表した
  2. 対象はAIの「中身」を国外へ移す行為で、APIやアプリ、ネット越しのサービスとして使ってもらうことは管理の対象外と明記した
  3. すでに無料公開されたモデルや論文で発表済みの技術も対象外とし、今後の無料公開には簡単な手続きで許可を出す方針を示した

中国の商務部と科技部は現地時間10月16日、輸出を禁止または制限する技術の一覧を改める案を公表し、大規模なAIモデルやAIエージェントなどAI関連の23項目を新たに加えるとしました。対象はAIの「中身」を国外へ移すことで、APIやアプリを通じて海外の利用者に使ってもらうことは管理の対象外と明記しています。

何が発表されたか

今回の案は、中国が2001年から運用している「中国禁止出口限制出口技術目録(輸出を禁止・制限する技術の一覧)」の改定案です。商務部・科技部の2026年第48号公告として意見募集にかけられ、商務部の報道官が質疑応答の形で狙いを説明しました。

追加するのはAI・医薬・太陽光発電の3分野で計40項目、うち輸出禁止が14項目、輸出制限が26項目です。AI関連は、大規模なAIモデル、AIエージェント(指示を受けて自分で作業を進めるAI)、大量の計算機をつないだ「計算クラスター」、情報処理にかかわる23項目です。

具体例として、AIが自分で攻撃用の不正プログラムを作ったり作り変えたりする技術は「禁止」、AIでソフトの弱点を探す技術は「制限」に挙がっています。報道官は前者について、国の重要なインフラや軍事、行政のシステムへの攻撃に使われかねないと説明しました。

どのモデルが対象になるかについて、米Bloombergは、パラメーター数(AIの規模を表す数字)が2兆以上か、性能や利用の多さなどで世界の上位10位に入るモデルの重み(学習で得た中身のデータ)、ソースコード、設計などが対象になると報じています。ドイツのThe Decoderも同じ基準を報じています。

何が対象外か

案のなかで、海外の企業や利用者に最も関係が深いのは「何が対象にならないか」です。報道官は、制限対象の大規模モデルを使ってサービスを提供する形について、次のように説明しました。

中国商務部 報道官の質疑応答公式発表

对于企业利用限制类大模型对外提供API调用、APP/网页交互、SaaS应用、本地端侧轻量化部署等情形,不属于大模型技术出口管理范围。

企業が制限対象の大規模モデルを使い、海外向けにAPI、アプリやWebでのやり取り、SaaS、端末向けの軽量版を提供する場合は、大規模モデル技術の輸出管理の対象外とする。

原文を読む(mofcom.gov.cn)

ほかにも、次のような整理を示しています。

  • すでに無料公開(オープンソース)されたり、論文で発表されたりした技術は管理の対象外とする案
  • これから無料公開する場合や、中国企業が海外に自前で建てて運営する計算センター、海外での半導体の試作、海外との共同研究などは「自動許可」で、届け出ればすぐに出せる扱いにする
  • 制限対象のモデルを海外のサーバーに置いて動かすのは管理の対象。ただし自社の海外クラウドなら簡単な手続きで済む

報道官は「大半のAI技術は引き続き自由に輸出できる」としています。一方で、一覧の改定が正式に決まるまでの間、対象の技術を国外へ移す企業は、事前に商務部のシステムへの登録が必要になりました。この暫定措置は公告の発表日から始まっています。

背景

中国では、アリババのQwenやDeepSeekのように、中身を無料公開して海外でも使われるAIモデルが次々に出ています。今回の案は、そうしたモデルの国外への出し方を国が届け出や許可を通じて把握する仕組みになります。Bloombergは、今回の基準に当てはまりうる例として、中国の新興企業ムーンショットAIの「Kimi K3」やアリババの「Qwen3.8-Max」を挙げています。

報道官は今回の改定について、特定の国や企業を狙ったものではなく、AIを「人間の管理下に置く」ための必要な管理だと説明しています。

反応と論点

米国のAI政策の論者ディーン・ボール氏はXで、これは「中国が無料公開モデルをやめる」という意味ではないとしたうえで、中国政府が将来のモデルの無料公開を好きなときに止められる余地を作ったものだと指摘しました。米国がすでに使っているモデルの重みの輸出規制と鏡写しの関係にある、とも書いています。

The Decoderは、この動きによって欧米の企業が中国製より米国製の無料公開モデルを選ぶ傾向が強まりそうだと分析しています。一方で、無料公開の扱いをあらかじめ緩くしたことで、中国企業がこれまでどおりモデルを世界に配る道は残されています。

日本のビジネスへの影響

使えるか: 今回はあくまで案で、意見募集の段階です。案のとおりなら、日本の企業がQwenやDeepSeekなど中国のAIをAPIやアプリで使うことや、すでに無料公開されたモデルを自社のPCやサーバーで使うことは対象外です。

誰にどう効くか: 中国製の無料公開モデルを自社サービスや社内システムの土台にしている開発責任者・情報システム部門と、中国のAI企業との提携や技術導入を検討している経営者に関係します。今後出る高性能モデルが、規制を理由に無料公開されなくなったり、提供の条件が変わったりする可能性はあります。

今すぐやれること: 自社で使っているAIモデルのうち、中国製のものとその使い方(API経由か、自社サーバーに置いているか)を一覧にしておくと、正式決定の内容が出たときにすぐ影響を判断できます。手元で動かせるAIの選び方はローカルLLMのガイドにまとめています。

注意点: 対象となるモデルの具体的な数値の基準は、商務部の質疑応答には書かれておらず、報道によるものです。正式な一覧が決まるまでは、案の段階の情報として扱う必要があります。

一次情報

参考にした報道(2件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。