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詐欺電話にAIが「だまされ役」で出て時間を稼ぐ、豪Apateの仕組みを銀行や通信会社が採用

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. オーストラリアのApateは、被害者のふりをするAIに詐欺の電話やメッセージへ応対させ、詐欺師の時間を奪っている
  2. 会話の中で振込先の口座や暗号資産の送金先を聞き出し、銀行や通信会社が詐欺対策に使う。会話は250万回を超えた
  3. 豪最大手の銀行CommBankが2025年に採用し、同社は820万ドルを調達して英国と米国にも広げる

オーストラリアの新興企業Apateは、被害者になりすましたAIを詐欺の電話やメッセージに応対させ、詐欺師の時間を奪いながら手口や送金先の情報を集める仕組みを提供しています。同国最大手の銀行Commonwealth Bank of Australia(CommBank)が2025年6月に採用を発表しました。報道によると、これまでの詐欺師との会話は250万回を超えています。

何をしているか

ApateのAIは、詐欺の電話に出る「だまされ役」です。年齢や性別、話し方、なまりの違う何千もの人物を演じ分け、詐欺師に本物の被害者だと思わせて話を長引かせます。そのあいだに、詐欺師が使う振込先の口座番号や暗号資産の送金先、電話番号、偽サイトといった手がかりを聞き出します。

仕組みの中心は「おとり」の電話番号です。CommBankの発表で、Apateのダリ・カーファー最高経営責任者(CEO)はこう説明しています。

CommBank Newsroom「CommBank harnesses near real-time, AI-powered intelligence to outsmart the scammers」公式発表

When a scammer dials or messages one of these numbers, they actually engage in conversations with one of our AI-powered bots and not a person

詐欺師がこれらの番号に電話やメッセージをすると、実際には人ではなく、私たちのAIのボットと会話することになります。

原文を読む(commbank.com.au)

Apateは通信会社と組み、詐欺師に見つかって狙われるように作った電話番号を大量に用意しています。通信会社が詐欺の疑いが強いと判断した電話を、AIに回すこともできます。公式サイトは、電話を止めるだけでは詐欺師はすぐ番号を変えるため、相手をして時間を使わせるほうが詐欺の商売を成り立たなくできると説明しています。

どう使われているか

集めた情報は、銀行や通信会社の詐欺対策に送られます。CommBankは、Apateから届く情報をほぼリアルタイムで自社の詐欺検知の仕組みに取り込み、新しい手口の把握に使っています。CommBankで詐欺対策を統括するジェームズ・ロバーツ氏は、発表で次のように述べました。

CommBank Newsroom公式発表

Every minute a scammer is engaging with a bot, is a minute they're not targeting an Australian.

詐欺師がボットの相手をしている1分は、オーストラリアの人を狙えない1分です。

原文を読む(commbank.com.au)

Apateの会話相手は電話だけではありません。TechCrunchによると、文字でやり取りするAIがSNSのグループや投資の掲示板に入り込み、詐欺の勧誘を探します。顧客の側から「この詐欺グループの振込口座を聞き出す」といった任務を与えることもできると報じています。

成果と規模

FinTech Globalによると、ApateのAIは最長2時間、詐欺師と会話を続けられます。これまでの会話は250万回を超え、そこから25万件以上の手がかりを集めたと同社は説明しています。TechCrunchも250万回という数字を伝えています。

同社はシドニーのマッコーリー大学の研究から2024年に生まれました。2024年末に大学が試験運用を始め、2025年6月にCommBankとの提携を発表しています。TechCrunchによると、創業のきっかけは、家族とのピクニック中にかかってきた詐欺電話の相手を、カーファー氏が44分間続けたことでした。

2026年8月には820万ドルを調達しました。ロンドンに拠点を開き、米国での事業も広げる計画です。TechCrunchによると、社員は20人です。

日本で真似するなら

必要なもの: Apateの仕組みは、通信会社と組んで電話番号を用意し、詐欺の電話をAIに回すところから始まります。個人や一般の企業がそのまま真似できるものではなく、銀行・カード会社・通信会社・自治体の規模で検討する話です。

手順の目安: まずは自社の顧客が受けている詐欺の電話やSMSの手口を集め、どんな情報(振込先の口座や偽サイトのURL)が取れれば被害を減らせるかを決めることから始まります。AIに演じさせる人物像も、狙われやすい年代や話し方に合わせる必要があります。

注意点: 日本語の詐欺電話に対応するには、日本語での自然な会話と、日本の詐欺の手口を学ばせる必要があります。Apateが日本でサービスを提供するという発表は現時点でありません。また、AIが集めた情報を捜査機関とどう共有するか、通話の録音をどう扱うかは、法律や個人情報の扱いを確認してから決める必要があります。

日本のビジネスへの影響

使えるか: Apateは日本向けのサービスを発表しておらず、すぐに導入できるものではありません。

誰にどう効くか: 特殊詐欺やなりすましの被害に悩む銀行・カード会社・通信会社の不正対策の担当者と、経営者に関係します。電話を止めるだけの守りから、AIで相手の時間と情報を奪う攻めの守りへ、という発想の転換を示す例です。

今すぐやれること: 自社のブランドをかたる詐欺の電話やSMSの報告を、手口ごとに整理しておくと、こうしたサービスの検討や海外の事例との比較がしやすくなります。AIによる電話応対や音声の作り方を調べるなら「音声合成・AI読み上げの選び方」も参考になります。

注意点: 会話の回数や集めた情報の件数はApateの説明で、第三者が検証した数字ではありません。詐欺師がAIの相手だと気づけば効果は下がるため、AIを見破られにくくする工夫を続ける必要があります。

一次情報

参考にした報道(2件)

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。