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Magnitudeがエージェント向け推論エンジンを発表、端末上で自動調整しMacで92%高速

画像はAIで生成したイメージです

3行でわかる

  1. YC 2025年夏期出身のMagnitudeが、AIエージェント向けのオープンソース推論エンジンをLaunch HNで発表した
  2. モデルを動かす前にGPUカーネルを端末上で約1分かけて調整し、同社の計測ではMacの生成速度がllama.cppより92%速い
  3. Claude CodeやCodexなど既存のエージェントに1クリックでつながるが、複数GPUには未対応で、速度が逆転したとの報告もある

米Y Combinator(2025年夏期)出身のMagnitudeは現地時間9月30日、AIエージェントが使うモデルを手元のパソコンで動かすためのオープンソースの推論エンジン「Magnitude」を、Hacker Newsの「Launch HN」で発表しました。モデルを動かす前に、計算の部品を自分のパソコンに合わせて調整するのが特徴です。同社の計測では、Mac(M4 Pro)での文章の生成速度がllama.cppより92%速くなりました。

何を作ったか

推論エンジンとは、公開されているAIモデル(オープンウェイトモデル)を自分のハードウェアで動かすためのソフトです。llama.cpp、Ollama、LM Studioがよく知られています。Magnitudeはこの分野に、エージェント用途に絞って参入しました。

製品はmacOS・Windows・Linux向けのデスクトップアプリです。おすすめのモデルを選んでダウンロードし、使っているエージェントにつなぐだけで使えます。README(説明書)によると、Pi、OpenCode、Hermes、OpenClaw、Codex、Claude Code、Oh My Pi、Clineには1クリックで接続でき、それ以外もOpenAI互換のAPIでつながります。エージェントがモデルを必要としたときだけ起動し、使われなくなると止まります。

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公式動画(YouTube)

ライセンスはApache 2.0で、無料です。モデルをダウンロードした後はネット接続が不要で、プロンプトもファイルも手元から出ません。公式のカタログには10月1日時点でQwenやGemmaなど15モデルが並んでいます。

公式ドキュメントmagnitudedev/magnitudeMagnitude(GitHub) · github.com

どう作ったか

きっかけは、創業者のAnders Lie氏とTom Greenwald氏が以前に作ったオープンソースのブラウザ操作エージェント(GitHubのスターは4,000以上)を、手元のモデルで動かしたくなったことです。2人はLaunch HNの投稿で、今の推論エンジンはデータセンターでのまとめ処理、幅広い機器での互換性、特定の機器への特化のいずれかを優先しており、エージェントを手元で長く動かす使い方に合うものがなかったと振り返っています。

Magnitude公式リポジトリ(README)公式ドキュメント

They ship kernels precompiled for broad classes of hardware. Magnitude compiles and tunes its kernels on your actual device before a model runs, so they fit your exact chip.

(ほかのエンジンは)幅広い種類のハードウェア向けに事前にビルドしたカーネルを配っています。Magnitudeはモデルを動かす前に、実際の端末の上でカーネルをコンパイル・調整するので、そのチップにぴったり合います。

原文を読む(github.com)

カーネルとは、GPUで行列計算などを実行する小さなプログラムです。Magnitudeは調整できる値を残した形でカーネルを書き、端末上で最適な値を探します。この調整は、新しいモデルをダウンロードするたびに1回、約1分かかると創業者はHNで答えています。開発はRust製で、カーネルの最適化には複数のコーディングエージェントを並行して走らせているとも明かしました。

エージェント向けの工夫もあります。最初はモデルの重みの分だけメモリを確保し、会話が長くなれば増やし、エージェントが止まれば解放します。同時に動く複数のセッションで共通部分の計算結果(プレフィックスキャッシュ)を共有し、会話の記憶(KVキャッシュ)は圧縮して保存します。

成果(同社が公表した数字)

条件は、Qwen 3.6 35B A3B(4ビット)、文脈長6万4,000トークン、投機的デコード(小さなモデルで先読みして速くする手法)なしです。

機器 生成速度(tok/s) 読み込み速度(tok/s) エージェント1つあたりのメモリ
Mac M4 Pro 48GB 30→57(+92%) 466→507(+9%) 28%減
NVIDIA DGX Spark 49→58(+19%) 2,033→2,507(+23%) 27%減

比較相手はllama.cppです。リポジトリのスターは10月1日時点で約5,800でした。

反応と論点

HNの投稿は157ポイントを集めました。調整が約1分で済む点を評価する声がある一方、利用者からは厳しい指摘も並びます。「llama.cppに勝つのは低いハードル」で、Macにはもっと速いエンジンがあるという書き込みや、RTX 5070 Tiではllama.cppの方が20〜30%速かった、M5 Maxでは読み込みも生成もllama.cppが約2倍速かったという報告です。創業者は、M5以降の新しい行列演算を使い切れていない可能性を認め、改善すると答えました。

現時点では複数のGPUを束ねる構成に対応していません。今後は、大きなモデルの一部をメモリやディスクに置いて必要なときだけ読み込む機能などを予定しています。収益化は、将来ローカルとクラウドを行き来できる推論クラウドを作り、トークン単位で課金する構想だと説明しています。

日本のビジネスへの影響

Magnitudeは無料で、日本からもダウンロードできます。公式サイトとドキュメントは英語です。

関係が深いのは、社外に出せないコードや文書をAIエージェントで扱いたい開発者と、情報システム部門です。手元のMacやGPUマシンでモデルを動かし、Claude CodeやCodexのつなぎ先をローカルに切り替えられれば、機密性の高い作業だけを社内で完結させる使い分けができます。

今すぐやれるのは、普段使っている機器で、同じモデルをllama.cppやOllamaとMagnitudeの両方で動かし、速度とメモリを比べることです。公表値はM4 ProとDGX Sparkのもので、ほかの機器では逆の結果も報告されています。

注意点として、バージョンは0.2系で、公開直後から不具合の報告が出ています。業務に組み込むのは、自社の機器で検証してからにしてください。ローカルでモデルを動かす選択肢は「ローカルLLM・オープンウェイトモデルのおすすめ」にまとめています。

一次情報

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この記事の編集責任者

田中智大

AIデジマ編集長/株式会社ドイル 代表取締役

株式会社ドイル代表。元Googleで広告営業・コンサルティングに従事し500社以上を担当。広告運用とAIエージェント開発を手がける。